第1章 ファン1号の憂鬱
ちなみに私、世界選手権大会でも二人に殺されました。
いや、物理的な話じゃなくて。
だって「アレやってー!」って冗談で言ったつもりだったのに、ノリノリでやってくれるなんて思わなかったんだもの。
世界選手権大会が東京だって時点で行くしかないでしょ!ってなってはいたけど、あれはほんとに行って良かった。
目の前でお姫様だっこ見れたんだから後悔はないです。
「ちょっと、なに本懐は果たしたみたいな顔してるの!今日はヴィクトル選手応援しに来たんでしょ!」
「あっ、そうだった!」
「も〜、まだフリー始まってもいないよ?」
ミカさんが呆れた、という顔で私を引っ張る。
「それにしても、ミカさんよくチケットとれましたよね!」
「私にはねぇ、チケット取りの神様がついてるのよ」
「なんですか、それ」
「豪運だってことよ」
「もうミカさん!一生ついていきます!」
フリー滑走が始まる。
ヴィクトル選手と徹くんの出番は、まだまだ先だ。
だから今のうちに呼吸を整えて、これ以上ないくらいの声援を贈ろう。
最愛の選手と、その教え子に。