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【黒バス/HQ】アイシテルの続き

第10章 青峰大輝 *



8月31日

それは、少し横暴で、巨乳好きで、でも世界で一番大好きな人の誕生日。

なのに。

「つながらない……」

短いシーズンオフを終え、8月から始まるキャンプに合流するためにアメリカへと旅立っていった彼からの連絡は、皆無といってもいい。

「電話するって言ったくせに。大輝のバカ」

また電話すっから、と空港で頭をポンと叩く大きな手を思い出すように、結は伸びた前髪を指で引っ張った。





青峰大輝が在籍するクリーブランド・キャバリアーズの本拠地があるアメリカ・オハイオ州と日本との時差は約14時間。

日本で日付が8月31日に変わる0時は、現地ではまだ誕生日前日の正午前。

だが、愛しい人がこの世に生まれた記念日を、たとえ遠く離れていたとしても、一番先におめでとうの言葉を伝えたいと願うことは、わがままなのだろうか。

ワインレッドのユニフォームに身をつつみ、華やかな場にも臆することなく、縦横無尽にコートを駆けぬける青峰大輝という男は、日本の、そしてバスケ界の宝なのだから。

(仕方ない、よね)

そう自分に言い聞かせながら、何よりも結自身、バスケをしている時の彼が一番好きだった。

そっけない声も、少し乱暴なキスも、ベッドの上で荒々しく波打つ浅黒いカラダに抱かれている時でさえ、コートの上の彼には敵わないと思ってしまう自分があまりにも滑稽で、少し悔しい。

「お風呂入ってこよ」

何度かけてもつながらない携帯をベッドの上に放り投げると、結はニヤける顔にひとりムチ打ちながら、洗面所へと向かった。




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