第6章 青峰大輝
六月の花嫁は幸せになれる
梅雨のある日本に、何故そんなジンクスが定着したのかは分からない。
昨日から降り続く雨とジメジメした空気。
朝セットしたクセのある髪は、空調の効いたホテルに到着するまでの湿気を含んで見る影もない。
新郎新婦や親族はともかく、披露宴に呼ばれる身としては、あまり有難くたい季節のはずなのに。
「ひとめ惚れだったんです~」
幸せオーラ満開の甘ったるい声を聞き流し、グラスに残った赤ワインを一気に飲み干す。
華やかなカクテルドレスで着飾った花嫁の隣で、だらしなく鼻の下をのばす花婿のどこに、そんな要素があるのだろう。
そもそも一目惚れなんて信じない。
我ながら可愛くない性格だとは思うけれど、こればっかりは仕方がない。
都内では名前を知らない者はいないであろう一流ホテルのフルコースと、花嫁のたった一人の同期という理由だけで披露宴に出席したことを軽く後悔しながら、私は盛り上がる会場を抜け出した。