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散弾の雨.op

第1章 月|トラファルガー・ロー


唇はすぐに離れて、彼は私を見つめて口を開いた。
「お前を、殺したい」
酷く焦燥と熱を孕んだ目で、彼は立ち上がって、闇に消えていく。
『ロシー、待ってよ』
私を殺してくれるんでしょう。私は、とっくに貴方を裏切っている。今になって償いがしたいなんて望まないから、せめて、せめて貴方の手で死にたい。私を殺して、地獄に落とせるのは貴方だけだから、お願い。
『ロシー!』
遠くでリロードしたような音がした。ロシーが見付けられない。辺りは一面闇で、あるのは月明かりだけ。これじゃあ、ロシーを見付けられない。
「おれは…」
ロシーの声が聞こえる。
『ロシー、どこにいるの?』
「さん、あんたは今…幸せか?」
私にとっての幸せなんて、貴方が死んだあの日から少したりとも存在しない。
でも、貴方が私を殺すなら、その瞬間だけは幸せかもしれないじゃない。
『幸せよ、とても幸せなの』
「月が綺麗だ…でも、まだ満ちた月には足りない」
彼のその言葉に空を見上げる。確かに、あとほんの少しだけ欠けていた。きっと明日には満月になるだろう。
「…明日の月は、もっと綺麗だろうな」
『I love you. My Law.』
いつか、私が死んでからの明日の話を、聴かせてくれる?
ねぇ、ロー。
私ね、貴方が好きよ。ロシーと貴方が重なって見えた。でも、貴方は彼じゃなかった。
それでも、貴方に殺されたいと思ってしまった。
私が最後に見たものは、欠けた月と、貴方の涙。



fin.
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