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散弾の雨.op

第1章 月|トラファルガー・ロー


「おれは、お前を殺せるよ」
甲板に腰掛けていた私の隣に、ローが長い脚を放り出して座った。肩にはローの背丈ほどもある愛刀を提げて、暖かそうなコートを羽織っていた。
『…そう』
私がローを殺せぬままにドレスローザへ帰っても、ジョーカーは私を許すだろう。「おれは仲間の失敗は咎めない」とかなんとか言って、また私を膝に乗せるのだろう。
ロシーが死んでから、私の人生は大きく変わったように思う。私自身、最初はジョーカーの考えに賛同しファミリーの一員となったけれど、そこでジョーカーの弟であるロシーと出会った。ロシーと仲良くなるにつれて、自分の考えが間違っているのではないかと自問自答することが増えた。『…コラソン、私は…間違っている?それとも貴方が間違っているの…?教えて…私には…私にはわからないのよ…!』「自分の信じた道が正義だ。おれは、海軍として生きることに決めている。それがおれの信じた道だ」ロシーは曖昧な返事を返して苦く笑った。ロシーは本心からの表情以外はとても下手だった。だから、そのときの笑顔は完全に作った笑顔だと、私にはすぐわかった。『…やめてよ、そんな笑顔』そう言っても、彼はより一層苦笑を深くするだけだった。
『ローは、私のことを恨んでいる?』
私のその質問に、隣に座ったローは首をこちらに向けて苦笑した。ロシーと同じような下手くそな笑顔。どうしても、彼を重ねてしまう。
「恨んでいるなら、こんな想いはしてねェ…てめェのことなんか、とっくに殺してる」
『…そう、なの』
ローの冷たい手が私の頬に流れた涙を拭っていく。
「いい加減に泣き止め」
『貴方を…死なせたくない…!ジョーカーの元へ行くのはやめにして…きっと、ロシーもそう望んでいる…!』
涙を拭っていた手が止まって、撫でるような手付きに変わった。ローの方を向けば、彼と視線が交じわる。
『…殺してくれる?』
ローの瞳が更に鋭くなって、彼は私の質問に返事もせず私に口付けた。
ロシーがよくした、触れるだけのキスをした。
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