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散弾の雨.op

第1章 月|トラファルガー・ロー


やけに空が晴れた日の深夜、黄色い潜水艦の上。私は一人口遊んでいた。
『Are you hiding from me,』
「天使様がこんな所に、何の用だ」
後ろから昔よく聴いた声がする。この声が叫んでいるのをよく聞いた。死んだような瞳で、自ら身体中に手榴弾を巻きつけてやって来たこの声を、私は酷く美しいと思ってしまった。その瞬間を、よく覚えている。私は声に背を向けたままに話し始める。
「ジョーカーが貴方を殺せって言うのよ」
彼が刀に手をかける音だけが辺りの静寂に響く。
『別に今すぐ殺すつもりはないわよ…ただ、どうしようか悩んでいるの』
「てめェがドフラミンゴを裏切るとは思えねェ…てめェは、ドフラミンゴの右腕だろう」
ローは私の首筋に鬼哭の刃先を充てた。「今、ここで殺しておくか?」
低く甘い声でそう囁く彼に、心臓が跳ねる。
『好きにして、…貴方になら、殺されても本望だもの』
本心を口にすれば、彼は面白くないとでもいうように刀を鞘に戻した。また気不味い静寂が辺りを支配して、波の音だけが聴こえてくる。
「ドフラミンゴは、おれが殺す」
ジョーカーとは長い付き合いだけれど、私は一度もジョーカーを名前で呼んだことはない。他の幹部や部下たちがジョーカーのことをドフィと呼ぶのを、私だけはずっとジョーカーと呼び続けた。
ドフィと呼んでしまうことは、ロシーを裏切ることになってしまうと思ったから、呼べなかったし、呼びたくなかった。
『…コラソンが、昔言ってたわ』
昔にロシーと話したことは一言一句、全てを鮮明に思い出せる。
『「ローはおれにとっての夢だ」って。…そう言ってた』
ローの話をしているときのロシーはとても嬉しそうだった。まるで大事なものを宝箱に仕舞う子どものようだった。
何てったって、ローの為にファミリーは愚か海軍までもを裏切って、命まで投げ棄ってしまう男だ、きっとそれ以上の気持ちだったのだろう。
『本望だったと思うわ、貴方の為に死ねて』
「おれにとってコラさんは、心だった。おれが亡くした心を、あの人は亡くさずに持っていてくれた。夢だとか希望だとか、今のおれには不釣り合いな言葉ばかりを詰め込んだ心を、おれはあの人に預けてたんだ」
『ジョーカーは貴方を疎ましく思ってるのよ、コラソンと同じように、消してしまおうと考えてる』
私の頬を何かが伝う。
『…私は、貴方の為に死ねるのかしらね』
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