学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
つくづく嫌な大人だと、スモーカーは己の心の狭さに内心毒吐く
するとセナの頭に乗せていた手が下ろさせられると、小さな両手で包まれる
布越しに伝わる温もりが、まるで陽だまりのようだとスモーカーは顔を上げた
此方を見ているセナと目が合う、彼女の黒曜の瞳の中に自分が映り込んで間抜けな顔をしている
キラキラと星空のように輝く瞳が、ゆっくり細められてゆく
「スモーカー先生ありがとうございます!」
「あ?」
「ローさ、ローの呼び方のこと…教えてくれて」
「……別に大したことじゃねェだろ」
優しく微笑む表情と言葉に、胸が締め付けられた
このまま、この腕を引き寄せて閉じ込めてしまいたいと浅はかに想う
凶悪な衝動を必死に抑えているのを知ってか知らずか、温もりは静かに離れていった
「他の人にも、色々聞いてみます!」
「転ぶなよ。…思い出せるといいな」
「絶対思い出してみせます!じゃあ!」
慌ただしく職員室を出ていった小さな後ろ姿を紫煙の向こうに見送って
スモーカーは胸の鈍い痛みを知らぬふりして、静かに仕事に戻った
*
「トラ男とどんな感じだったか、ってなんだ」
「だから!記憶があるときの私と、ローは傍目からどんな雰囲気だったとか…」
「興味ねェ」
「…マリモのゾロに聞いた私が間違ってたのかしら」
「テメェまでマリモって言うな」
職員室を出たセナは剣道の自主練で学園内にいたゾロを、道場に戻るために迷っていたところで捕まえて
道場裏で休憩するのにお邪魔している最中だった
「色恋沙汰なんざ興味ねェんだよ。どこかのアホコックと違ってな」
「興味がなくても!いつもお昼見てるでしょ?ちょっとしたことでもいいから」
「面倒臭ェ…」
ゾロは汗の滴る緑色の髪をタオルでガシガシと拭う
色恋に興味はないが、確かに仲間の観察はよくしている
しかし大体眠りこけていたり、起きているときは食べているか…こうして剣道の鍛錬をしているときしかないほど
何故セナは自分頼ってきたのか。いくら校内を歩いていた仲間とはいえ、もしかしたら無駄足かもしれないのに
「ゾロなら…」
「?」
「私たち2人を見てくれてる気がしたの」
サンジやナミ、キッドのようにセナ側に立った贔屓目な見え方だけでなく
常に中立的であるゾロは、ロー側からの見え方も知っている気がした