学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
「セナお前今!ゾロって…!?」
ウソップが驚き過ぎて若干鼻水を垂らし青ざめながら、セナとゾロを交互に見遣る
「え、なぁに?変なウソップくん」
「俺の事も知ってるゥー?!」
「やだ、本当に変なの」
一瞬の間に、何をきっかけかゾロとウソップの記憶が呼び起こされたようだ
その状況に全員が目を丸くする、全くもって今思い出すとは考えていなかった
そして、今のセナは記憶が呼び起こされたということは
「…おい、」
「?はい?」
何やら怯えているウソップの肩を掴んで、ローが一歩前に出た
セナに呼びかけると、こちらを振り向く
「俺が、分かるか」
「いや…」
唐突なローの問いかけに、セナは首を捻る
やはり、記憶が呼び起こされたことによりリセットされてしまったようだった
「…ならいい」
「えっ、誰か教えてくれないんですか?」
「…知りてェのか」
「そんな質問されたら、気になりますよ」
これから先、何度名乗って何度忘れられればいいのか分からない
本当に全てを思い出したとき、思い出してくれるのであれば
忘れられることを恐れる心配はなくなるのではないか
『それでも』
例え忘れられようと、一分一秒でも彼女の記憶に残りたいと思う
「トラファルガー・ローだ」
「トラファルガーさん、ですね?」
「ローでいい」
この学園で出会った頃のように呼ぶセナに、同じように言葉を返す
こうして幾度と無く記憶が呼び起こされては、リセットされることになる
日々を重ねるごとに、幼馴染のペンギンや親友のナミ・ビビ・カヤ、教師陣であるスモーカーやエース、サボ、レイリーが思い出されてゆく
しかし一向に忘却が続くのは恋人であるローの記憶だ
呼び起こすきっかけが未だ掴めないまま、試験は無事に終わり、学園は冬休みに入った
明日はクリスマスイブだ
セナは部屋のカレンダーに×印をつけながら、明日と明後日に跨いで書かれた予定を目にする
"ローとお泊りデート"
『ローって…?』
デートということは、きっと恋人なのだろうけど
何故か自分には"ロー"に関する一切の記憶がない
思い出さなくてはいけない気がするのに、思い出そうとすると頭が痛んでそれどころではなくなる
「ロー…」
ポツリと部屋で1人、愛しいはずの人の名を呼ぶ