学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第3章 年越しそばと姫納め(*)
「その顔…」
「ん?」
「反則…!」
セナはローの顔にバフッと枕を押し付けて、視線を背けた
それでもまだ、くぐもった声で笑う気配がする
それなのに押し付けられた枕を退けられると、ローは不機嫌そうな声を出した
視線を外したままのセナは、その声音にビクリと細い肩が跳ねる
「何しやがる」
「あの…その、」
「こっち向け」
「う…」
命令口調気味で、抑揚のない声をしたローの言葉にセナは恐る恐る視線を動かす
あと少しでその視界に不機嫌な姿を捉えようと思った矢先、グイと肩を引き寄せられると目の前いっぱいにローの顔が広がった
けれどその表情は決して怒っているようではなく、寧ろボヤけ気味な口元は笑っているように見える
「なに泣きそうな顔してんだ」
「…怒って、ない?」
「怒る理由がねェ」
「ん、ッ」
唇を甘く食まれ、ハッキリと表情を読める距離が空いた
不機嫌どころか、いつもより機嫌が良さそうに見える
セナは内心ホッと胸を撫で下ろした
「からかわないでよ」
「怯えてる顔もそそるからな」
「うわぁ」
「引くな。…セナだけだ」
向かい合う体勢から、ローは隣に並んで横になる
セナの下で変形した枕を押し退け、代わりに腕を差し込んだ
「ロー」
「なんだ」
「今年も、貴方を愛していいですか?」
腕の中で、ローを見上げる瞳は真剣だった
窓から差し込む月の光に煌めく瞳には、少しだけ間抜けな顔の自分が映っていて、何度目か分からない笑みを微かに漏らす
「却下だな」
「…え」
「今年だけじゃねェ。未来永劫、俺だけを愛し続けろ。セナ」
不確かな未来の話を持ち出すなどひどく滑稽だ
けれど、セナに対してはその滑稽さすら欲してしまう
だからこそ、彼女が望むのなら
「…私なんかで、いいの?」
「お前以外、誰がいる」
「…ローが望んでくれるのなら、貴方を愛し続ける。絶対、離さないで」
はにかんだセナは真っ赤な顔を隠すように布団に潜り込む
ローが後を追うように潜り込むと華奢な身体を力一杯抱きしめる
抱きしめたまま、紡ぐ言葉
「愛してる」
きっと来年も再来年もその先もずっと
肩を並べて熱々の年越しそばを啜り
姫納めと称して、愛を確かめ合い
こうして愛を紡いでいく
END