学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第3章 年越しそばと姫納め(*)
一騒動あったクリスマスも無事に過ぎ、すぐ後を追うように迫ってくるのは、12月31日の大晦日
世間の喧騒に合わせるように、みんな慌ただしく残りの日々を過ごしていた
セナとローは、付き合い始めてから初の年越しを共に過ごす約束をしている
しかしそれには色々と準備が伴うもので、クリスマス以降、学校も休みなため中々会うことができずにいた
お互いに毎日の電話や、メールをやり取りする性格でもないため
当たり前のように、すれ違う日々が続いている
「あーもー…大掃除終わらないぃ…」
普段から家の片付けには勤しんでいる方だが、やはり見落としがちな箇所というのは出てくるもの
更には気になりだすと、気が済むまで止められない性格も災いセナは家の中の端から端までを磨き上げるハメになっていた
「お母さんたち、そろそろ着いたかな…」
換気のために開けっぱなしの窓から、冬の高い青空を見上げる
両親は年末年始の休暇をフルに活用して、実家や親せきの家を回ってくるのだという
本来ならば、娘であるセナもついて行くべきなのだろうが、何故か今回は両親から家に残るよう言い渡されていた
「あれは絶対、余計な自慢話をしてくるに違いない」
セナに彼氏ができたことや、その彼氏がイケメンだとか、命の恩人だとか…
友人のウソップ並みに鼻高々と、ちょっとした脚色も入りながら酒の肴にされるのだろう
『来年からも行くの嫌になってきた』
けれど、そんな両親の機転のおかげか、年末年始はローと自宅でのんびり過ごせるのだ
初めて付き合った大好きな人と、年の節目を過ごせるのはやはり嬉しい
「よし、ローが来るまでに掃除終わらせるぞー!」
雑巾を片手に掲げ、セナの高らかな宣言は閑静な住宅街の寒空に吸い込まれていった
***
ガチャリと、ドアノブが回ればゆっくりと玄関の扉が開いた
同時にすきま風が降り出した雪と共に吹き込んでくる
「寒いから早く入って!」
「あぁ」
約束の時刻に現れたのは勿論、恋人のローで久々の逢瀬だ
バタン、と扉が閉まったのを確認すると外気に冷えた身体に抱きつく
「…フッ。やけに積極的だな」
「なっ、だっ…だって…会いたかった、から」
触れるコートは冷たいはずなのに、顔はみるみる熱が上がっていく
「ローは、寂しくなかったの?」