学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
「あれ会長いつの間に来てたンすか?」
突然現れたローに、きょとんとしたペンギンが問いかける
「昨夜のうちから来ていた」
「え、でもセナは………」
「「あれっ、さっき会長のこと呼び捨ててた?!」」
首を傾げたシャチと、ペンギンはハッと気付いたように声を揃えた
『ということは記憶が戻ったのね!』
『良かったなぁ!セナ』
行き着いた答えに、今度はセナの両親が歓喜の声を上げる
そのことに対しては、確かにセナにとっても嬉しいことではあるのだが…
「だからって!ケーキ食べたのは許さないからね!」
「『うっ…』」
それとこれとは話は別である。上手く誤魔化されるところだった
「もういいだろ。また作ればいいじゃねェか」
「ローまで…!だってこのケーキは」
ローのために、セナが愛情を込めて作ったモノだ
確かに何度だって作ることは出来る、けれど一つ一つに込める想いは、その時々で違うのに
「残りは返して貰うぞ」
「えっ、ちょっ、会長?!」
ローは原形をとどめていないケーキの皿を持ち上げると、ペンギンのフォークを取り上げプスリと差し込み掬い上げる
そしてパクリと一口、ケーキを口に含んだ
それからひたすら、ローは1人で残りのケーキを綺麗に平らげてしまった
「ふぅ…全部受け止めたぞ」
「…え?」
「どんな形だろうが全部受け止めてやる。お前の想いも、俺への愛もな」
空になった皿にフォークを乗せてテーブルに戻す。『美味かった』と呟けば、ポンポンと低い位置の頭を撫でた
「だから、また作ってくれるか」
「ッ、うん!ありがとう、ロー」
パチパチパチパチ…
すっかり2人の世界に入ってしまっていたローとセナは、拍手の音に現実に引き戻される
それはいつの間にかギャラリーと化していた、シャチとペンギン、更にはセナの両親が目元に光るものを浮かべながら送る拍手だった
「会長マジ男前すぎて…!」
「男の俺でも惚れそうッス…!」
『本当、お似合いよねっ』
『ああ、相手がローくんなら安心だな』
恥ずかしい歓声にセナは口をパクパクとさせて、真っ赤になるとローの後ろに隠れてしまう
その様子にローは内心クスリと笑みを溢し、好きなようにさせておいた
2人の初めてのクリスマスは、こうしてにぎやかに幕を閉じるー