第3章 Juvenile
なんで、侑李も一緒に行ってくれないの…?
車外の侑李の動きを目で追う。
そんな俺に気づくことなく、侑李は磯貝と話をしている。
雅「潤。辛そうだな?今日は止めとくか?」
兄さんが向かいのシートに腰掛けながら話しかけてきた。
「…ふぅ…大丈夫。翔くんとかずくんに…会いたい…ふぅ…辛くなったら…言うから…」
雅「そうか。絶対に辛かったら言うんだぞ?」
ゆっくりと頷いた。
「わかった…ふぅ…」
兄さんが優しく頭を撫でてくれた。
俺の隣に座ってきた恵は背中を擦ってくれた。
「ありがとう…ふぅ…ふぅ…」
何度か深呼吸をしてからシートに横になった。
恵が身に着けていたストールを肩にそっと掛けてくれた。
「…ふぅ…ありがとう…恵…」
恵「うん。目的地までは寝なよ?」
「うん…そうする…ふぅ…」
恵が目を細くした。
俺はゆっくりと目を閉じた。
雅「おう。それじゃ、長瀬せんぱ…、いや、長瀬っち。出発しちゃって~」
兄さんが小声で長瀬さんに声をかける。
学校の先輩だった長瀬さんが、今はお父さんの運転手だから、兄さんもやり辛いだろうな…。
と、危惧してたんだけど。
兄さんは、いつもの兄さんだった。
たまに、先輩って呼んじゃう事あるのは兄さんらしいなって思う。
長瀬「はい」
車がゆっくりと走り出す。
磯貝と侑李が恭しく頭を下げて「いってらっしゃいませ」と見送ってくれた。