第2章 Malaise
潤。
お前はなんて優しいやつなんだ。
身体が弱い潤は、中々外出が出来ない。
ベッドで過ごすことが多いから気分転換になるし、今日は俺の運転する姿を見せてやりたかった。
母「あら?みんな揃って何しているの?」
母が俺たちの後ろから声を掛けてきた。
絹地のパジャマの上からガウンを羽織って気怠そうに立っている。
恵「おかあさん。おはようございます。何でもないですから。食事を終えて部屋に戻るところなだけですから」
母「ふーん。そうなの?」
そう言って、俺を一瞥してふっとハナで笑う。
母「てっきり私の悪口でも言ってるのかと思ったわ」
ちっ…。ムカつくな、この女。
この女は、後妻だ。
元々はうちのメイドのひとりだった。
まあ、あとはよくある話で。
要するにこいつが俺たちの本当の母親を追い出した張本人だ。
恵と潤はこの女のことをちゃんと“おかあさん”と呼んでいる。
だが、俺はこの女が嫌いだ。
“おかあさん”なんて呼んだことはない。
本当の母親がこの家から追い出されたのは、俺が7歳になる年のことだった。
俺は本当の母親の顔をかろうじて覚えているけど、潤たちは、全く覚えてないと言っていた…。
まあ、そうだろう。
二人ともまだ2歳になったばかりだったんだから。
「そんな訳、ないですよ。それでは、俺ら出掛けないといけないので…これで失礼します」
母「あ、そうね。行ってらっしゃい」
その言葉を聞き終わる前にその場から足早に立ち去った。
朝から胸糞わりぃ…。
早く俺の天使ちゃんたちに会いたいぜ…。