第2章 Malaise
―7時―
磯貝「おはようございます。雅紀さま。そろそろ…ってあれ?」
俺たち兄弟の専属執事の磯貝が毎朝決まった時間に起こしに来てくれる。
でも、俺は…
「へへへぇ。ここだよ、磯貝」
一人で寝るにはでか過ぎるキングサイズのベッドの下から這い出た。
小さい頃から起こされる前に起きて、磯貝を驚かそうと隠れて待っている。
毎朝のことなのに、いつも初めてみたいに驚いてくれる磯貝。
誰よりも俺のことを理解してくれてて、ほんとに大好きなんだ。
磯貝「雅紀さま。そちらでしたか。いやあ、隠れるのが上手ですなぁ。まったくわかりませんよ。ふはは」
「磯貝は捜すの下手なんだよ~。ああ、腹へった。さあ、メシ食べよおっと」
パジャマからスーツに着替える。
スーツは、磯貝が選んでくれたもの。
普段着るものは自分で選ぶんだけど、スーツは磯貝に任せている。
鏡を見て、くるりと全身をくまなくチェックする。
うん、今日もイケてるね~、俺っち。
磯貝「雅紀さま。グッドですぞ」
親指を立てて満面の笑みを向けてくる。
本来なら、主人に対してこんな言葉使いとか駄目なんだろうけど、俺が「俺たち兄弟の前では無礼講ね!」って、頼んだんだ。
俺、ガキンチョの頃からどうも堅苦しいのが苦手なんだよね~。