第1章 Sunshine
雅紀が俺の隣にスライドして近寄ってきて、耳元で囁いてきた。
雅「潤のこと、うらやましい~って、思ってんだろ?くふふ」
雅紀の顔を押しながら小声で
「うっせえな。ばか雅紀!」
って言ったら、雅紀がニヤニヤしながら俺を見てきた。
俺は、何でもお見通しですよ、というその顔に益々ムカついた。
だけど、今日はガマンガマン。
…もう、大学生じゃない。
こんな些細なことでいちいちキレてられない。
そう、自分に言い聞かせた。
いつもと違う俺の態度に雅紀が「ちぇっ。つまんねえの」って、不満顔をした。
ふっふっふ。
俺も大人になったのよ?
いつまでもその手に乗るかよ。
翔くんを見ると潤くんの頭を一定のリズムで撫でていた。
カッと全身が熱くなる。
そこのポジションは俺のものなのに!
翔くんは、俺のオニイチャンだぞ!
潤くんを押し退けたい衝動に駆られる。
雅「かず」
雅紀が俺の背中を擦ってくれた。
不思議なことにすうっと気持ちが落ち着いてきた。
はあ…。俺って、まだまだ子供だな…。
雅紀に向かって口パクで「ありがとな」って、言ったら親指を立ててニヤリとしてきた。
そんな俺らのやり取りを長瀬さんがミラー越しにじっと見ていた。