第3章 White note
「俺は、君のそういう優しさや君の持つ儚さや弱さって尊いものだって思ってる」
弱いって響きはマイナスに聞こえるけど、逆に考えると人の気持ちに敏感で人の傷みをわかる強さでもあると彼は言う。
そんなこと言ってもらえたのは初めてだ。
私は私が嫌いだった。
何もない自分は生きていていいのだろうかと毎日考えていた。
私のアイデンティティがわからなくて、生きているのが苦しかった。
だけど彼は言ってくれた。
「真っ白の何がいけないの。真っ白も色の一つだよ。それが君の色なんじゃない?」
その一言がとても嬉しかった。
「赤葦君」
「なに?」
「私は自分に自信がないです」
「うん」
「自分のいいところがわかりません」
「俺も俺のいいところがわからない」
「だけど赤葦君が私の優しさとか弱さが良いと言ってくれた時それでいいんだって少し思いました」
「それはよかったです」
「赤葦君」
「なに?」
放課後の教室。
誰も居ない教室。
私は、勉強もできて部活でも活躍してて、クラスメイトの人気者で、もっと言えば部活のチームメイトからも慕われている人気者の彼に向き合った。
私みたいな何もなくて、何もできなくて、彼の言う優しさなんてものはとてもあやふやで形のないもので確かめるすべなんてどこにもなくて、できそこないのような人間を彼は見てくれたことが嬉しくて、溢れ出しそうになる涙を必死にこらえて、彼に言いました。
「好きっていう感情は私にはわかりません。だけど、私は今初めて心臓が温かくなりました。好きと言う気持ちがこういう温かさなら私は赤葦君の隣にいたいと思いました。……でも、まだ怖いのです。お友達から始めませんか」
震える手を彼に差し出した。
彼は嫌な顔一つしないで私の手を握ってくれた。
真っ白なノートが、この瞬間色が付いた気がした。
まるで、秋の空。
雲一つない綺麗な水色と青色が混ざった色。
気温は少し肌寒いけど、上を見上げれば優しだで包み込んでくれる温かさ。
これがあなたの色なのね。
とても素敵な色。
「今はまだお友達。だけど、そのうち覚悟しといてよ」
そう言って彼は握っている私の手を思い切り引っ張り、バランスを崩した身体は彼の体の中に閉じ込められた。
Fin.