第3章 栗毒薬計画 ▼赤羽業
この、顔。愛しいって、好きだよって言われてるような、そんな、笑顔。想いが溢れるように伝わって、多分これは私の勘違いとかじゃ……ないと思う。胸がきゅって締め付けられてトクン、と温かな音を立てる。
業のこの表情を見るようになったのは、付き合ってすこししてから。初めて見た時は真っ赤になってしまって思わず照れ隠しのように彼に抱きついたりしてた。
だけど、これ、業は無意識らしい。多分わざとやってるとかそういうのじゃない。そういう時、業はもっと悪戯げな顔をするから。
「ありがとう……」
「ん、じゃ行こっか」
さり気なく繋がれた手は、皆に見つかってからかわれる前にそっと外す。私たちはそういう意味でちゃんと中学生だ。
***
なんだかんだで出来上がった毒薬入りの栗。業の突拍子もない発想によって出来上がったそれはどこからどう見ても普通のくり。
香ばしい栗の匂いが鼻腔を擽る。ついつい食べてしまいそうになるも、それは間違えてもしてはいけない。
何故なら、この栗は奥田さん特製、毒薬漬けの栗だから。
毒薬入だとわかっても手が伸びてしまいそうになる栗を殺せんせーに持っていく。この時怪しまれないような動作、仕草、表情がとても大切。
細心の注意を払って殺せんせーに運ぶと、先生はぱくりと口に含み、
「………これは青酸カリですねぇ。
これだと先生は髭が生えます」
髭が新たに増えたのだった。
おわり