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☆2016企画バトンリレー☆

第10章 リ


 指先と指先が触れあった瞬間、そこから火花が走ったかのような感覚が影山の体に走った。
次の瞬間には二人とも勢いよく手を引っ込めてしまい、ボールは重力に従って落下し、音を立てて床を跳ねていった。
てんてんと転がったボールは黒いシューズの爪先にぶつかって動きを止める。
ボールを拾い上げた人物は、意味深な笑顔を浮かべながら影山に声をかけた。

「おやおやぁ、どうしたのかな?トビオちゃん」
「……別に、なんでもないッス」

 及川の何やら含みのある言い方に、影山はムッとしながら答えた。

「ふーん?俺にはそうは見えなかったけどねぇ。…ねぇ飛雄。折角だから、ちょっと勝負しない?」

 何度かボールを両手でくるくると回した及川は、やにわに片手でむんずと掴み上げると影山に向かって突き出した。
影山には、及川の意図がハッキリとは読めなかった。
けれど、単にライバル校のセッター対決を望まれているような雰囲気で無い事は感じ取っていた。
及川の考えは分からないにしても、挑まれた勝負を受けないという選択肢は影山には無かった。

「いいっスよ。受けて立ちます」
「そういう生意気な態度、ほんっとムカつくわ」
「……勝負って、何の勝負なんすか」
「そりゃあ勝負って言えば、試合しかないでしょ」

 先ほどの及川の言い種からすると、勝負の内容が『試合』を指しているようには影山には思えなかった。
まるで影山との一対一の対決を望んでいるような口ぶりだったのだ。
けれど、及川が続けて放った言葉を聞いて、影山はようやく彼の意図を掴んだのだった。

「ただの試合じゃないよ。ちゃんを賭けた、試合」
「…っ、ハァ?!何、言ってんスか、及川さん…」

 不穏な空気が流れる影山と及川を取り巻くように、周囲はそんな二人の様子を窺っていた。

「何ナニ?喧嘩?」

 事情を全く知らない木兎がどこか能天気に見えて、チラと彼を横目で見て赤葦は小さくため息をついた。
 
「…ある意味、そうかも知れませんね。……俺も参戦したいですけど割り込めそうに無いですね」

 赤葦の言葉に、月島は気取られないように、けれど強くキュッと唇を噛んだ。
の事を想っているのは彼らだけでは無いのに、と思いながら月島はただジッと事の成り行きを見守る事にした。

「…???」

 ただ一人木兎だけは、状況を理解できないでいた。
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