第11章 最後の言葉
土「収穫なしか」
声の方に顔を向けると額に青筋を浮かべたトシがいた。
『当り前ですよ。銀時が知らない事をヅラが知るわけない』
そう言うとトシは歩み寄ってくる。
土「どうする気だ?」
トシは私の髪を撫でる。私の髪は随分短くなった。
腰まであった髪は今では、肩にもとどいていない。総悟と同じくらいかそれよりも短いくらいだ。
『聞くしかないですよ・・・・・嫌だけど』
土「誰のことだ?」
トシは私の髪に触れ、目を閉じるように言う。素直に目を閉じながら口は止めない。
『・・・・・最も過激で最も危険な攘夷浪士』
土「・・・・高杉か」
『でも、たぶん春雨の母船にいるような気がするんですよね・・・・・そうなったらどうしようもないし』
土「俺としてはこうやって見す見す桂を取り逃がしてる方がよっぽどだ」
手が離れ、目を開けるとトシは笑っていた。
頭に手をやると冷たいものが手に触れる。
土「かんざしだ」
『・・・・・へぇ・・・・・』
土「長いのも似合ってたが、短い方が俺としてはいい」
『そういえば・・・・・ミツバさんも短かったっけ』
土「ああ、そうだったな」
悲しそうに顔をゆがませる。仕方がないことだ。トシにとってミツバさんは特別な存在だった。それを超えようとは思わないし、その思い出に首を突っ込もうとも思わない。
どうしようもないことなのだから。
『ありがとう』
土「お前当分ありがとうって言うな」
『?』
土「思い出す」
何を?とは聞かない。
『じゃあ、愛してるもダメ?』
それはいいよね。せめて言わせてよ
土「恥ずかしげも無く・・・・・・」
『言えない分だけ言うの』
ミツバさんの分まで。
『とりあえず、自分のことを知らないとね』
土「・・・・どうかしたのか?」
『なにが?』
そう尋ねると、トシは顔を逸らした。
やっぱり髪が短いと思い出すの?一度総悟に言われた。姉上にそっくりだって。
私と重ねないで。あなたがミツバさんを大切に思ってるのは知ってる。でも、私は私だよ?
『・・・・私って・・・・・何だろ?』
土「・・・・・俺にとってか?」
『それもあるけど・・・・・でも、本当に何なんだろ?とりあえず・・・・・』
私は空を見上げた。
言いたくない言葉。でも、言わなきゃ前に進めない気がする。
『人じゃない』