第11章 最後の言葉
目の前で何が起こっているのかわからなかった。
俺達をかばって瑠維があの男に刺された。
深々と瑠維の胸に突き刺さった刀と俺達を濡らしている赤い血がそのことをまざまざと表している。
理解は出来る。だが、本能的に分かろうとしていない。
俺の脳が思考を停止させている。
倒れ込んだ瑠維の体を無意識に受け止めていた。
血で赤く染まった胸元、止まろうとしない血。
口からも流れ出ている。
分かろうとしていない。
なのに涙が流れてくる。
俺の頬に瑠維は手を置く。
その手を俺の涙が濡らす。
それを見て瑠維は笑う。
その顔は今までみた中で一番儚かった。
声を出す気力も無いのだろう。だが、声は出ていなくとも口の動きでわかった。
何故そのような言葉を発したのだろう。
俺はお前を苦しめてきただけだ。なのにどうしてそんなにそんな言葉を、そんな顔で言うんだ。
幸せにしてやれなかった。
向き合ってやれなかった。
いつも俺が支えられていた。
最後になって、失う直前で気付いた。
遅すぎた。
お前の顔を俺は一生忘れない。
『ありがとう、愛してる』
最後のお前の言葉