第8章 昔の味方は今日の敵
私は刀を鞘にしまうと、涙を拭った。
トシを見ると、複雑そうな顔をしていた。
先ほどまでの会話だと・・・・・・私が追いかけていたのは真太郎さんで、トシの事は愛していない事になる。
でも・・・・・真選組を辞めるには・・・・・手っ取り早い口実にはなる。
トシを・・・・みんなを護るため・・・・・もう一度犠牲にならなくちゃいけないの?
その問いは・・・・・頭を隅で消えた。
みんなを護るためなら・・・・・私は・・・・・何でもする。
土「瑠維・・・・何やってんだ?」
『・・・・別に』
土「あの言葉・・・・本当か?」
『・・・・本当だって言ったら?』
土「・・・・・俺はただの・・・・・あの野郎の代わりだったってことか?」
『・・・・今さら気付いたの?』
私は笑った。
『真太郎さんと顔がそっくりだったからね・・・・・私の初恋はあの人なの。何年も思い続けてきた。彼が戻ってきたなら・・・・・・あなたは用済みね』
ほんとは違う。
全然違う!私が愛したのはトシだけ!
心が悲痛な叫びを上げる。でも、口は全然違う言葉を発する。
『私はあの人を追う。これで、うざったるい幕府の犬ともおさらば。腐れた芋侍どもの中にいると、こっちまで腐りそうね』
私って・・・・ほんとスゴイ。平気な顔で嘘がつける。
トシは意外と無表情だった。
土「んなことだろうと思ってたぜ。てめーなんか真選組にはいらねぇ。もちろん、あの男追えばいい。その代わり・・・・・もう二度と、俺の前に現れんな」
トシはそう言うと、振り返り煙草に火をつけた。
私はその横を通り過ぎる。
土「その隊服は、一生着るな。汚れる」
『着る気なんて毛頭ないわよ』
そう言い残し、街中を歩いて行った。