第32章 朧ともいはで春立つ年の内
銀「瑠維」
トシと別れた後、私は銀時に呼び出された。
山の上にある神社の裏側、陽の入ってこない薄暗い場所。
『どうしたの?』
銀「・・・あの女。お前ぇのこと殺すって意気込んでるらしい」
銀時の目は真剣だった。
でも、銀時?
『知ってるよ、そんなこと』
銀「どうする気だ?」
どうするって言われても・・・
私が返答に迷っていると、銀時がため息をついた。
そして目の前にチラシのような紙を差し出す。
銀「街の至る所に貼られてある」
見ると、そこには
「藤間瑠維。どこまで逃げても無駄だ。我々警察全精力で、貴様を叩き潰す」
と書いてあった。
『うわぉ、すっごい意気込んでんじゃん』
銀「大丈夫なのか?」
『当たり前でしょ』
なるべく早く話を畳みたい。
多分、神社の表に居る。
『ご忠告ありがとね、銀時』
私はもと来た道とは逆の方向・・・つまり、追っ手のいない方へと歩きながら、手を振る。
銀「ああ・・・っ、オイ!瑠維!!」
『!?』
私は後ろへ飛び抜いた。
目の前には5、6人の見廻り組の隊士が。
後ろを振り返れば黒い隊服、真選組の隊士がいた。
『後ろにばっかり気を取られた・・・かな』
呟き、刀を抜いた。
そのまま全速力で真選組の隊士の方へ突っ込んでいく。
振り下ろされる刀より速く、殴られそうになる腕より強く。
峰打ちででその場を凌いでいく。
そのまま真っ直ぐに行っても、どうせ袋の鼠。
なら、
「なっ!?」
誰の声かは知らない。
でも、隊士の一人が声をあげたのは見らずともわかること。
一か所、崖になっているところがあった。
そこから私は
身を投げ出した。