第31章 願ふ事あるかも知らず火取虫
土「で、どうするんだ」
病院を出ると、私たちは人気のない公園に行った。
ベンチに腰掛けながらトシがそう言う。
『・・・話し合ってくるよ』
土「通用しねぇだろ、あの女には」
トシの吐いた煙草の煙が舞う。
土「大体、あの女に何した?ここまでのことされるなんざ・・・よっぽどの事だろ?」
・・・なんで私が悪いみたいになってんのよ!
原因はお前だっつーの!!
『女の嫉妬は怖いねぇ・・・』
土「質問の答えになってねぇ」
めんどくさそうに私が呟けば、これまためんどくさそうに返事が返ってくる。
『あ、そうだ!』
土「どうした?」
『あの女とヤった?』
直球ど真ん中ストレート。
案の定、トシは目を左右にせわしなく動かしている。
『・・・まぁ、いいんだけど』
土「いや・・・なぁ?」
『うん、言い訳しないで』
事実は事実。
咎めるつもりはないし。
『自分で撒いた種は自分で処理してよ』
土「なっ!?撒いてねぇ!!」
『いや、そっちの話じゃない』
別にトシとヤろうがヤらんめぇが、いいけど・・・
『ジミーのことは許せないかな』
土「・・・そうだな」
『トシは動かないでね。逆に面倒なことになるから』
あの女はトシにべた惚れしてる。
トシが動くと、次は誰に危害を加えてくるかわからない。
『よっこらせ、っと』
土「行くのか?」
ベンチから立ち上がる。
『ん、まぁね。トシは真選組に戻りなよ、あの女に感づかれるのは厄介だから』
土「俺に、出来るこたぁ・・・」
『そうだなぁ・・・』
何があっても・・・
『手出ししないで?』
土「・・・」
『これは、私の問題』
トシをしっかり見つめる。
『でしょ?副長』