第28章 武蔵野やつよふ出てくる花見酒
『いらっしゃいませ~』
笑顔で客を招き入れる。
ここはお妙さんの働いているキャバクラ、「スマイル」だ。
なぜかと言うのは、前の前のページを見て欲しい。
働き出して二日目で指名がバンバン入るようになった。
妙「瑠維ちゃん、こっちの方が天職だったんじゃないの?」
『銀時にもそれ、言われました』
二人とも、営業スマイルは顔に張り付けたままだ。
妙「あ、来たわよ」
『ほんとですね』
お妙さんにそう言われ、振り向けば笑顔の近藤さん・・・と
近「こんばんわ、お妙さんに瑠維さん。いや~、相変わらずお美しい。ほら、トシも挨拶挨拶」
私の事をまるっきり忘れ去ってくれている土方十四郎がいた。
口をへの字に曲げ、不機嫌な(まだ軽い方の)顔をしている。
土「近藤さん、俺ぁ帰るぞ。仕事もまだ残ってるし、何より・・・」
近「はいはい、ルイちゃんが待ってるんだろ?まあ、少しぐらい付き合ってくれよ」
でもなぁ・・・と渋るトシ。
絶対私と付き合ってる時はそんなこと思わなかったよね?
だって平気で朝帰りとかしてくれちゃってたもん。
仕事だって言って、構ってくれなかったし。
あ~・・・思い出すだけでイライラする。
誰かぁぁぁ!!
私の脳みそから、トシの記憶だけ引きずり出してぇぇぇ!!
心の中でシャウトしながら、満面の笑みを浮かべてトシに話しかける。
『初めまして、近藤さんにはいつもお世話になっています。瑠維と申します』
土「あ・・・ああ」
『彼女さんがいらっしゃるんですか?ト・・・じゃなかった・・・土方さんくらいの色男なら、かなりの美人さんなんでしょうね』
嫌味たっぷり、皮肉たっぷり。
どうだ、土方!
土「そうだな・・・美人と言うよりかは可愛いかな」
『・・・』
お前・・・ほんっと殺してやろうか土方。
なんで若干照れてんのよ?はにかんでんのよ?
いや・・・可愛いよ、可愛いけどさぁ・・・
私にそんなこと一言も言ったことなかったよね?
『そうなんですかぁ~。土方さん、随分彼女さんにぞっこんみたいですね。いいな~、羨ましい』
近「そうなんだよ。こいつらさぁ、いっつもイチャイチャ、チュッチュッしやがってよぉ」
・・・今、一瞬近藤さんに殺意が湧いた。