第25章 デブの自覚
トシは私の顔をペタペタ触る。
土「顔もでかくなってはねぇし」
それから、お腹、太もも、ふくらはぎ、二の腕の順に触っていく。
土「なるほどなぁ」
『・・・太くなってますよね』
落ち込んだような声を出すと、いきなり胸を触られた。
びっくりして、振り払う。
『いきなりなんですか!』
土「最近お前、稽古サボってねぇよな?」
唐突にそう切り出され、少し考えてしまった。
『あ・・・はい』
土「お前、前より筋肉がだいぶついてるぞ」
『・・・えええ!?』
改めて、自分の二の腕やふくらはぎを触ってみると
『ほんとだ、前より固い』
土「見た目には出てねぇけどな。筋肉は脂肪より重いから、お前の体重も増えたんだろうよ」
トシのその言葉にほっと胸をなでおろした。
土「どうりで、なんか最近触り心地が悪ぃと思ってたんだよ」
『それ・・・セクハラですよ、副長』
セクハラ満載の発言に、少し怒ったような声を出すと、トシが微笑んだ。
ぎゅうっと言う擬態語が似つかわしいぐらい抱きしめられ、耳元でささやかれる。
土「柔らけぇ方が好きなんだけどな」
『すいませんねぇ。女らしくない体で』
向き合って、トシの膝に座っているため至近距離でトシの顔が見られる。
『嫌い?』
土「お前の体か?」
『うん』
首をかしげるように見つめれば、
ったくお前は・・・
と小言が聞こえてくる。
土「嫌いじゃねぇよ」
『ほんと?』
土「お前なぁ・・・他の奴にすんなよ」
照れたように頬を赤らめているトシに、何を?と問えば
いきなり唇に人差し指を置かれた。
土「首かしげんの。お前が思ってる以上にやべぇから」
人差し指を下すと、トシは私の唇に自分のそれを重ねた。
軽く触れる程度で、深追いはしない。
『トシも』
土「ん?」
『女の人にそんな風に笑わないでよ?』
私の特権なんだから、と拗ねたように口を尖らせる。
土「特権・・・なぁ」
『そう、特権』
私からねだるようにキスを仕掛ければ、それにこたえてくれる。
甘い甘い時間。
キスの合間に、トシが呟いた。
土「お前・・・」
『ん・・・』
土「胸、またデカくなってんぞ」
ああ、神様・・・
『ムードぶち壊しなこと言うなこのアホォォォ!』
このバカに天罰を下してあげてください。