第26章 交差する想い
ー う~ん・・・腫れも引いて来てはいるし、どうするかなぁ? ー
足を診察しに来てくれた医師が、私の顔を見てニコニコしている。
なんでそんなに笑顔を向けるのだろうと不思議に思っていると、私の顔を更に覗いて、また笑っていた。
ー お家に帰りたい? ー
『出来ることなら・・・そうしたいですけど・・・』
ー じゃあ、帰っちゃう? ー
『・・・・・・はい?』
帰っちゃう?と言って、すんなり帰れるものなんだろうか?と首を傾げた。
ー オレ的には、退院しちゃってもいいと思うんだけどなぁ?・・・で、どうする? ー
『あの、1週間は絶対にダメだって・・・兄が・・・』
そう、確かに桜太にぃはそう言っていて・・・
ー あぁ、そうだった!君は城戸先生の妹さんだったよね?相手は手強いな・・・よし、じゃあオレが城戸先生を説得してあげよう ー
『えっ?あの、説得って・・・どういう?』
ー 大丈夫、本来は頑なに入院しなくても、
おとなしく安静に生活してくれたら大丈夫なんだからさ?花のJKがいつまでもここにいたら退屈でしょ? ー
『はぁ・・・まぁそうですけど・・・』
本来は入院しなくても・・・?
安静に生活してれば?
ー ま、オレに任せときなさいって ー
そう言って陽気な先生は、枕元のナースコールを押した。
“ どうされましたか? ”
ー あ、オレオレ。その辺にさ、城戸先生いない?いたらここへ来て貰いたいんだけど。出来れば緊急で ー
“ 城戸先生ですか?分かりました、お伝えします ”
ー ヨロシク~ ・・・っと、これでよし! 今から城戸先生が慌てて来ると思うけど、笑っちゃダメだからね? ー
まるでイタズラっ子のように楽しそうに笑うのを見て、この先生は普段からこんな風な事をしているのだと感じ取れた。
数分と待たずにドアがノックされ、先生の言うように少し慌てた桜太にぃが部屋に入って来る。
桜「立花先生、緊急って伺いましたけど・・・紡が何か・・・」
長い白衣の裾を揺らしながら、桜太にぃが足早にベッドサイドまで近付いた。
ー 妹さんの足の事なんだけどね・・・ちょっと・・・ ー
桜「あ、はい、足がどうかしたんですか?」
ついさっきまでとは真逆の、それはとても真剣な顔で桜太にぃと向かい合う。
桜太にぃは桜太にぃで、その姿に真剣に対応している。
