第9章 新しい生活への1歩
私はそれを確認すると、わざと少し大きな声で話す。
『あ、もしもし~。あの、初めてでも予約って出来ますか?あ、はい、はい、そうです。えっと、カットとパーマと、あと、出来るならカラーリングまでやりたいんですけど~?・・・あっ!』
話の途中でリビングから飛び出してきた慧太にぃにスマホを取り上げられ、そのまま電話を切られてしまう。
まぁ繋がっていたのは留守番電話だけだったから。そこに関しては問題は無いケド・・・
恐る恐る、視線を上に上げていく。
眉間に深いシワを刻んだ慧太にぃと視線が絡む。
慧「紡、お前・・・」
『いや、あの、ちょっとした出来心でして・・・』
怒り出す気配を察知した私は、構えて言い訳をしようと言葉を重ねた。
作戦B・・・他店で予約する振りで揺さぶる作戦も失敗か、と、半ば諦めモードに突入した瞬間。
慧「お、お前はぁぁぁぁ!そんなどこの誰とも分からねぇ奴に紡の髪をどうにかされる位なら、オレが・・・オレがやってやるから!!!」
作戦成功。
『慧太にぃ、本当?!ありがとう!』
わざと大袈裟なくらいにお礼を言って、ギュッと抱きつく。
桜「慧太!!!」
桜太にぃが叫ぶのも虚しく、慧太にぃと約束を取り付けた私は、2人の兄に心でゴメンねと謝りながらも、新しく生まれ変わる自分を行く末に期待を膨らませていた。