第25章 追憶
ー 城戸先生はね、第一報が入った時とても心配していらしたのよ?ナースセンターを飛び出して行くほどにね ー
桜「飛び出してはないですよ・・・」
フフッと笑って、看護師さんは桜太にぃを見た。
ー 飛び出して行ったも同然ですよ?私達がセンターを出る時には、もうエレベーターの前にいたんですから。更に言えば、城戸先生はエレベーターが来るの待ち切れなくて階段を駆け下りて、 ー
桜「主任!お願いだから、もうそれくらいにして下さい・・・」
桜太にぃが話に割って入ると、看護師さんはクスクスと笑いながら部屋を出て行った。
桜「まったく主任は・・・」
『城戸先生?病院内は走っちゃダメですよ?』
桜「走ってないから!・・・まったく紡まで・・・それより、頭を打ってるって聞いてるから、専門の先生をお願いしてある。聞いたら今日は当直勤務だったから、ちゃんと診て貰いなさい」
専門の?
『頭、平気だけど?たんこぶあるくらいで』
手を伸ばし、自分の頭をそっと触って見せる。
桜「触るなって。たんこぶだって、立派な内出血の仲間なんだからね」
ー その通りですよ、お嬢さん ー
その声に桜太にぃが振り返り、今まで座っていた場所を開ける。
桜「すみません先生、宜しくお願いします」
見るからにおじいちゃん・・・年配の先生に、桜太にぃが頭を下げた。
当直って、若い先生だけじゃないんだ?
ー それじゃ診察しよう。城戸先生、君は先に手続きをして来なさい。今夜はお預かりする事になる。それに、君がいたら答えにくい事もあるかも知れないからね ー
桜「分かりました。宜しくお願いします」
桜太にぃが言われるままに部屋を出て行ってしまう。
部屋に残された私は、先生の診察を受け、聞かれる事に答えて行く時間を過ごした。
その質問は、武田先生がしたのとあまり変わらない物から、結構深く考えて答えなければならないものまで多種多様で。
私が質問に答える度に、目の前の先生は細かくカルテに記入しながら看護師に声をかけていた。
不謹慎だとは思うけど、退屈・・・
痛いのは足だけで、他は何ともない感じだから、余計に退屈になって来る。
ふぁ・・・
口元を隠し、小さな欠伸をする。
朝からバタバタで、いろんな事があって・・・
ホントはちょっと、疲れてる・・・