第25章 追憶
~影山side~
救急車を降りると、既にそこには桜太さんが待っていた。
救急隊員が白衣姿の桜太さんを見つけ、引き継ぎをするのを俺は黙って見ていた。
『影山?私は大丈夫だから、こんなに元気だし?だから、そんな死にそうな顔しないで』
寝かせられたままの城戸が、俺に向けて手を伸ばした。
「俺よりも、お前の方が死にそうな顔だ」
城戸の手を掴みながら、そう返す。
『痛いのは足だけだし、それよりも今は・・・桜太にぃのお説教の方が、よっぽど怖い・・・』
わざと肩を竦めて笑う城戸の顔を、空いている方の手で撫でる。
「そん時は、その、まぁ、アレだ。俺も一緒に怒られてやる」
『桜太にぃ、怒ると凄い怖いよ?』
「さ、澤村さんとどっちが?」
『大地さん?う~ん・・・あんまり大地さんに怒られたことないけど、多分・・・桜太にぃ』
マジかよ。
俺、いま選択肢・・・間違えたか?!
澤村さんより怖いって、ヤバイだろ!
『影山、顔色悪いよ?』
「だ、大丈夫だ。俺は今から腹括っとく事にする」
『なにそれ~』
「だからお前は、ちゃんと治してこい」
『うん、わかってる』
「完全復活したら、日向と月島のレシーブ特訓・・・やるんだろ?」
『それは大地さんにお願いするつもり。だって私は・・・今日までの約束、だったから』
城戸が俺から目を逸らし、ポツリと言った。
「お前は、それでいいのか?」
城戸はハッキリとした返事をしないで、代わりに寂しそうな笑顔を見せた。
その顔を見て、どう声を掛けていいのか分からなくなる。
ただ、言えることは。
俺は・・・お前が側にいてくれると・・・
[ 今から移動します。付き添いの方は救急処置室の前でお待ち下さい ]
桜太さんとやり取りをしていた隊員が戻り、城戸を乗せたストレッチャーを押して行ってしまった。
桜「影山君も、行こうか。案内するよ」
「あ・・・桜太さん」
背中に手を当てられながら、城戸が連れて行かれた部屋の前まで歩き長椅子に座らされる。
「ここで待ってて?しばらくしたら、慧太も来るから」
「はい・・・」
ポンッと肩を叩きながら、桜太さんはそう言った。
ー 城戸先生、チェックお願いします ー
桜「分かりました、すぐ行きます」
桜太さんは、もう1度俺の肩を叩いて歩いて行った。