第25章 追憶
矢巾さんが救急隊員を連れて戻り、いくつかの質問をされ、答えていた。
[ 頭部外傷で連絡を受けてるけど、足も怪我している様だね? ]
そう聞かれ、足のケガに関しての事情説明をする。
[なるほど。見たところ腫れが酷いし、病院に着くまで固定しよう ]
『固定ですか?!』
[ レントゲンや検査が終わるまでは、その方がいい ]
そうキッパリと言われてしまえば、言われるまま頷くしかなかった。
処置が終わるまでの間、何も出来ることもなくてボンヤリとしていた。
はぁぁぁ・・・
及「おっきなため息だねぇ、紡ちゃん?」
及川先輩?!
背後からの声に驚き、体を固くした。
『・・・・・・』
及「あらまぁ、無視ですか?及川さん泣いちゃうよ?」
『無視してるんじゃないです。ビックリして声も出なかったんです。あと、背後から気配消して近寄るのも、耳元で囁くのも・・・やめて下さい』
及「ふ~ん?紡ちゃんの弱点は・・・ここ、かな?」
ふぅっと耳に息を吹きかけられ、全身に鳥肌が立つ。
『お、おおおおお及川先輩?!やめて下さい!!』
耳を押さえ、精一杯の抵抗をした。
及「お?当たった?」
『・・・何の、意地悪ですか』
及「意地悪?そんなんじゃないよ」
『あ、ちょっと・・・』
及川先輩はそう言いながら、腕を伸ばして私の体を包んだ。
及「意地悪なんかじゃない。俺を死ぬほど心配させた、罰・・・だよ」
及川先輩の声に・・・ゾクリと震えた。
罰・・・?
それがどういう意味を含めているのか分からない。
けど、私は及川先輩の言葉に・・・何も返すことが出来なかった・・・