第24章 孤独と絶望感
青城のベンチに着くと、溝口コーチが私を抱えていることに周りがどよめき立つ。
そんな中で溝口コーチが、青城の監督に現状報告などをしていた。
監「なるほど、そういう事なら面倒見てあげるといい。お嬢さん、敵側のベンチは居心地悪いかも知れないが、そこは勘弁してくれ」
『お、お嬢さん?・・・すみません、ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。それから、私は城戸といいます』
失礼ながらも抱えられたままで挨拶をして、その場をやり過ごした。
監「しかし、溝口君が君を抱えてきた時には驚いたよ。遂にお嫁さん候補を攫ってきたのか、とね」
溝「監督?!」
カラカラと高笑いをしながら青城の監督は溝口コーチを見ていた。
溝「全く監督は・・・。城戸さん、今支度するからね。えっと・・・金田一、ちっと場所作ってくれ。それから国見、バケツに水を3分の1汲んで来い」
『あの!それ位は私が行きますっ』
溝「どうやって?」
溝口コーチが私を見てニヤリと笑う。
確かにそう言われると、未だ抱えられてる私にはどうすることも出来ない。
『あはは・・・そうでした』
そんなやり取りをしている内に、準備が終わり、私は椅子に降ろされた。
バケツに水と氷を入れ、その上から手際良くビニール袋を被せている金田一君と国見ちゃんに何をしてるのか聞くと、これが青城のオーソドックスな形だと言われて、こんなやり方もあるんだと興味深かった。
・・・何かの時の為に覚えておこう。
そう思って記録ノートの裏に書き込んだ。
溝「このやり方をすると、患部を水に付けることなく冷やせるんだよ。直接的に水濡れしないから、冷やした後のテーピング固定もやりやすいしね」
『そうなんですか・・・初めて見るので、とても興味深いくて、思わずメモっちゃいました』
私がそう言うと、吸収出来るものはたくさん吸収するといい、分からないことがあれば聞きなさいとまで言ってくれた。
ケガの事で、きっとお荷物になってる私に対してそんな風に言って貰えると、1人敵陣に乗り込んでいる立場からすると素直に有難いなと思えた。
国「紡、入れていいよ」
国見ちゃんに言われ、バケツに視線を落とす。
そこには見るからに冷たそうな物が用意されていて、ハイわかりましたと足を入れるには勇気が必要だった。
『待って、心の準備する』