第22章 終わりと始まり
いよいよ明日、か・・・
みんなのスクイズを作りながら、ぼんやりと明日の事を考えていた。
明日の放課後になれば、私も青葉城西に行く事になる。
いざ直前になると、私はマネージャー補佐だから行かなくてもいいのでは?
なんて弱気な気持ちにさえなってしまう。
清「どうかしたの?」
一緒にスクイズ作りをしている清水先輩が、その手を止めて私の顔を覗く。
『あ、いえ・・・練習試合、いよいよ明日なんだなぁって』
清「そうね・・・こうやって私達には、ひとつひとつが思い出が増えていって、また来年っていうのが減って行くのよ」
清水先輩の言葉に、来年はないんだっていう重みを感じる。
たがが、練習試合。
そう思う人もいるかも知れない。
だけど、そういった小さな積み重ねが、大きな舞台へのバネとなって現れる。
それは、どこの高校の3年生も同じ。
清「だから、澤村達にはひとつでも多くの経験と思い出を作ってあげたい」
『・・・そう、ですね。でも、清水先輩もですよ?メインでフル活動してるのはコートに入ってる人間かも知れませんけど、こうやって、清水先輩みたいに影で活躍してくれてる人がいるからこそ、だと思います』
清「・・・ありがとう。そう言ってくれると3年間マネージャーとしてやって来た事を自分でも褒めてあげられる」
そう言って清水先輩は穏やかに笑った。
清「さ、湿っぽいのは終わり。さっさとコレ、作っちゃいましょう」
ニコリとしながら清水先輩が空のスクイズに手を伸ばす。
『あ、清水先輩それは・・・』
私が声を掛けると、清水先輩は伸ばした手を止めた。
清水先輩が手に取ろうとしたのは、月島君のボトル。
今日は、昨日の山口君の言葉からヒントを得た中身を家から持って来てみたから。
『清水先輩、それには今日、コレを入れておいてみたいんです。・・・ジャーン!』
自分の手提げ袋から、2リットルのペットボトルを取り出し掲げて見せる。
清水先輩はそれを見て、笑顔を向けてくれた。
清「さっそく用意してみたのね?」
『はい。昨日帰ってから、兄と分量や味を試行錯誤しながら作ってみました。甘めって言っても、幅広いから。何度も味見しながら作ったから、きっと今日の私はハチミツ効果でお肌ツヤツヤですよ』
冗談を織り交ぜながらそう言って、わざとらしく自分の頬を撫でる。