第5章 霹靂
~岩泉side~
「あぁ、じゃ、また後で・・・。いや、慌てなくていいから」
俺は、これからの覚悟を伝えるために紡を呼び出した。
暫く会っていなかった事もあってか、電話の向こうで弾んだ声をしていた。
紡・・・。
これから俺は、お前を悲しませてしまう。
・・・ゴメンな・・・。
いつも紡と過ごしていた小高い丘の上のベンチに座り、俺は紡に出会ってからの日々をゆっくりと思い出していた。
紡が俺を好きだと言ってくれた日、凄く嬉しかった。
でも、本当は告白される随分と前からお前の事を知ってたんだ。
俺と及川が中学3年のとき、当時は体育館を半分ずつ男子バレー部と女子バレー部が使って練習してたから。
初めてお前を見た時、その頃はまだリベロをしていて経験者だってばっかりに、しこたましごかれてた。
体育館の中間に張ってあるネットを片付けてる時、お前が受けそびれて弾いたボールが俺の方へ転がって来た時、慌てて拾いに来たお前はサポーターしてるはずなのにアチコチに痣作ってた。
ほらよ・・・ってボールを手渡すと小さな体で元気いっぱいに礼を言った姿に、頑張れよって言いながら思わず頭をポンポンってした。
少し恥ずかしそうにしながら上目遣いで返事をしたお前と視線があった時、その時に俺は・・・
ガラにもなく・・・
胸の奥がキュッとなったんだ。
それからだったよ。
なぜだかいつもお前の姿を無意識に探していたのは・・・
「岩ちゃん、またあの子の事を見ちゃってぇ~?小さくて一生懸命でカワイイ~よねぇ~?うんうん、ここはひとつ及川さんが協力しちゃおうかなぁ~」
背後から声をかけられ肩が跳ねた。
振り向くとこれ以上にないくらいニヤついた及川がいて、思わずぶん殴る。
「っせーぞボケ川!!テメェ余計なことしやがったらブン殴るからな!」
「ちょっと岩ちゃん!殴ってから言わないでよ!!怒るって事は、認めてるって事なんだからね!!」
「黙れグズ川」
そんなやり取りを繰り返しているうちに、俺はお前の事が好きなんだと自覚した。
そして、それは時間をかけずともスグ及川にもバレた。
「あのさぁ岩ちゃん?告っちゃいなよ?」
及川のあまりに唐突な発言に、コイツの頭ん中は大丈夫か?と心配になる。
「あの子さ、小さくて一生懸命でカワイイし、意外に上級生や同学年にも人気あるんだよ?」