第16章 初めの1歩
帰宅してから、ボンヤリとウッドデッキで過ごしている。
特にやる事もなく、ただ、雲が流れていく空を眺めていた。
今日の3対3、見ていて楽しかったなぁ・・・
時折、そんな事を思いながら。
無事に影山と日向君はバレー部に入部する事が出来たし、今頃は嬉しそうに練習してるんだろうな。
ふと、帰る前の事を思い返す。
青葉城西高校との、練習試合・・・
出された条件と日時。
頭の中で、いろんな思いが交錯する。
私は大きく深呼吸をして、クッキーを咥えながらベンチにゴロンと寝転ぶ。
青く抜けた空は、変わらず雲が流れていく。
《 紡、そんな事してると子ブタになるぞ 》
不意に声をかけられて、声がする方に視線を送る。
『慧太にぃ?!いつからいたの?!』
予想もしなかった姿に驚き、飛び起きる。
慧「結構前からいたし、声も掛けたけどな?リビングからだけど」
『うそ?!』
全然気が付かなかった・・・
慧「んで?我が家の子ブタちゃんは何をそんなに大きな口開けてため息してんだ?」
慧太にぃはそう言いながら、さり気なく隣に座る。
『ちょっと!わざわざ隣に座らなくても、あっちにも椅子あるじゃん!それに子ブタとか言わないで!』
慧「隣に座るなとか、そんな思春期みたいな事を言ってんなって。お前そのうち洗濯物とか別に洗い出すんじゃないだろな?」
意地悪に笑いながら、慧太にぃが言う。
私はいつもそうやって構ってくる慧太にぃに、たまにはお返しをしようと企んだ。
『洗濯物を別?今頃?そんなの慧太にぃのだけとっくに別洗いだし。桜太にぃのは一緒に洗うけど』
サラリと言って、プイっと横を向く。
慧「マジで?え?嘘だろ?え?なんで?!」
急に慌て出す慧太にぃの様子がおかしくて、暫く騙そうとしていたのに堪えきれなくなって笑ってしまう。
慧「あぁ?!お前オレを騙したな!!」
あっけなく嘘だとバレて、慧太にぃは私の頭を鷲掴みする。
『あたっ!痛いってば!』
慧「お前が悪い!危うくオレのガラスハートが粉々に砕け散るところだっただろ!」
『防弾ガラスのクセによく言う!!』
慧「な~んだとぅ~」
鷲掴みされた頭に加えて、鼻まで摘まれる。
『もーヤメテー!』
私が降参しようと声を上げたところで、桜太にぃが窓から顔を出した。