第15章 3対3 + 1
赤信号で止まる度に、ゆっくり呼吸を整える。
ちょっとダッシュしたくらいで息が上がるとか、私の体力どれだけ落ちてんのよ。
部活引退してからの不低落に苛立ちを覚える。
体力作りを続けていたら、毎朝の走り込みだって続けていれば・・・
今更ながら〝 たら、れば 〟の後悔が何度も押し寄せてくる。
でもいまは、そんな事に構っていられない!
とにかく走り続けた。
あと少し・・・
もう少し・・・
あの角を曲がったら、もうすぐ!
!!!!!
見慣れた校門に寄り掛かるように手を付き、上がりきった呼吸を落ち着かせる。
ハァハァとくり返しながら、オデコに浮き出る汗を押さえる。
つ、着いた!
時間は?!
校舎の時計を見上げると8時50分を少し回ったところだった。
間に合った?!
まだ整いきれない呼吸をお供に、ヨロヨロと体育館へ向かって歩いた。
体育館まで、あと数メートルの所まできて、足が止まる。
そう言えば、勢いだけでここまで来ちゃったけど・・・
果たして普通に訪ねて行っても平気なのだろうか?
普段の体育館への出入りは、早朝で、菅原先輩と田中先輩以外の正規部員に会うこともなく、ごく当たり前の様に体育館へ出入りしていた。
でも今日は?
恐らく、いや確実と言うほど部外者だよね。
・・・どうしよう・・・
思い切って前に進むでもなく、かと言って帰るわけには行かず、その場を数歩ウロウロとしていた。
「あれ?体育館に何か用事?」
突然声をかけられ、肩をびくつかせながら振り返る。
そこには初めて見る部員らしき人が、体育館の入口からコチラを見ていた。
『あの。えっと・・・影山と・・・日向君、の、試合は・・・?』
たどたどしく答えると、穏やかな表情のその人は、あぁ、2人の友達?と言いながら私の方に歩いてくる。
スラリと背の高い、優しそうな表情をしたその人は、私の前まで来ると少し背をかがめ視線を合わせてくれる。
「俺はバレー部2年の縁下っていいます。もし良かったら、中に入って見学する?2人の友達なら中に入っても大丈夫だから」
2年生・・・って事は、田中先輩の同級生って事だよね?
何だか正反対な感じの2人に、ちょっとだけ笑ってしまう。
『1年の・・・城戸です。あの・・・』
そう名乗りながら答えて、体育館をチラリと見る。