第40章 指先が奏でるもの
ー ピッ! ー
審判のホイッスルを合図に、及川先輩がまたサーブを打ち青城側がまた得点を上げる。
凄い・・・頭では分かってはいたし、これまで及川先輩のサーブなんて数え切れない程見ては来たけど、それでも見る度に凄いと感じてしまう。
旭「これで4本連続サービスエース・・・」
繋「威力は言うまでもねぇが、あのコントロールもえげつねぇよな」
日「でも、あのサーブさえどうにかしたら」
菅「確かにサーブも怖いけど、セッターとしての及川はオレたちにとって完全に未知だよ」
その場にいる誰もが、コートの中にいる及川先輩から目を離さずに思っている事を口に出す。
ー ピッ! ー
また、及川先輩のサーブ・・・
けどそれは相手チームにレシーブされ、高く上がったボールはネットを超えて青城側へと戻った。
「チャンスボール!!」
それは難なく青城のリベロが拾って、そのボールの行き先はもちろん・・・
及「オッケー」
及川先輩だった。
繋「セッターってよ・・・オーケストラの指揮者みてぇだと思うんだよ。同じ楽団、同じ曲でも・・・指揮者が変われば音が変わる」
指揮者・・・確かにそれはそうだと、繋心の言葉に心で頷いた。
例えば、烏野だってそれは同じ事だと思えるから。
菅原先輩がセッターとしてコートにいる時と、影山がセッターとしてコートにいる時では、同じようにトスを上げてゲームメイクをしていても連携やみんなそれぞれの動きも違う。
セッター以外、メンバーが同じだとしても。
それが一番分かりやすいのは、烏野と青城のあの練習試合を思い出せばよく分かる。
あの時の青城のセッターは矢巾さんで、他のメンツは同じ。
セッターが変われば、チーム内の空気が・・・変わる。
ー ピッ!! ー
菅「なんて言うか、凄い滑らかな連携だよな」
影「及川さんと、岩泉さん・・・あの4番のレフトの人。あのふたりは小学校のクラブチームから一緒らしいです。阿吽の呼吸、ってやつみたいです」
菅「そうなのか・・・だからってのもあるんだろうな」
なるほど・・・と、菅原先輩が小さく呟く。
繋「練習試合の時の2年セッターのレベルが低かった、とかじゃないと思うんだよなぁ。青城に入ってるワケだし」
武「・・・えぇ」
矢巾先輩もちゃんと上手い、けど・・・及川先輩に似なくていい所もあるんだけど。