第39章 聳え立つ壁
『もちろんです!遅れたしまった分をここで取り返したいと思います!』
オーバーなくらいに元気よくガッツポーズを見せれば、清水先輩もお願いね?と笑って自分が持つ記録ノートにペンを走らせる。
清水先輩がスコアをつけてくれてるなら、私は私の仕事をしよう。
そう思って清水先輩と同じようにノートを開き、階下に広がるコートに視線を向ける。
青城とは練習試合もしてるけど、あの時は及川先輩が最初からコートにいたわけじゃない。
むしろ、全くいなかったとも言える状態だったのにも関わらずあれだけ厳しい試合運びになってた。
けど今は、及川先輩が最初からコートに入り試合をしてる。
それだけで青城チームの空気感は、ここで見ている私たちにもあの時とは違うと感じ取れる。
烏野が目指すカラーコートに立つには、まずこの青城を倒さないと前には進めない。
その先はきっと、白鳥沢だって・・・伊達工とは比べ物にならない程の大きな壁として立ちはだかる。
負けたくない。
・・・負けられない。
そんな思いを胸に置きながら、少しずつ進んでいく試合の流れを、誰がどうコートの中で動いているかを記録していく。
スタメンでコートに立っているのは言わずと知れた顔見知りなメンバーで、それぞれのポジションを確認しながら名前を書きながら国見ちゃんや金田一君の名前を書いては、強豪と呼ばれる青葉城西で1年生ながらスタメンに入ってるってのは、やはり凄いんだなと関心もする。
あの、一見やる気無さげな国見ちゃんが、なんて失礼か私は!なんて事も考えながら動き出している試合の流れを追いながらメモを執る。
青葉城西から推薦が来なかった影山。
白鳥沢からも推薦が来なくて、一般入試を受けたけど結果として烏野に来た影山。
もしその影山が烏野にいなかったら、と考えると烏野は今この場にいなかったかも知れない。
って言うのは大げさかもだけど。
日向君がいて、それから東峰先輩に西谷先輩・・・もちろん澤村先輩や他にコートに出入りする人達がいるから、影山だけに頼らずここまで来れたって事があるんだけど。
それでも自分より影山をとセッターとしてコートに立つ事から身を引いた菅原先輩からしたら、やっぱり3年間ともに頑張って来た澤村先輩や東峰先輩とコートに立ちたいってのはホンネとしてあると思う。