第39章 聳え立つ壁
菅「オレからこんな事を言うのは、なんか変かも知れないけど・・・次の試合、よろしく頼む」
『スガさん、それって・・・』
そこまで言いかけた時、影山が私に目だけで今は何も言うなと伝えて来る。
菅「伊達工業は強敵だ。前の試合の時も、あの完璧なブロックでオレたちはコテンパンにやられた・・・でも今は、日向と言う最強のオトリがいる。影山、日向の前の道を切り開いたように、旭の・・・エースの前の道も切り開いてくれ」
頼むって・・・そういう事なんだ・・・
合宿の時、音駒との練習試合のスタメンを繋心が発表した時、そこに菅原先輩の名前は上がらなかった。
なのに菅原先輩は、なぜかスッキリとした表情をしていて、それが私は気になってしまって。
その後、合宿所に戻ってから繋心に訊ねたら、菅原先輩が繋心に直談判しに来たって話してくれた。
繋「・・・だから1つでも多く勝って、次に進む切符が欲しい。その切符を手に入れる事が出来るのが菅原より影山だと少しでもオレが判断するなら···迷わず影山を選ぶべきだって、アイツは・・・そう言って来たんだよ」
『でも、だからって・・・音駒高校とは練習試合だよ?スガさんだって、まだ可能性があるかも知れ、』
繋「紡。お前だってホントは分かってんだろ・・・菅原と影山の実力の差は。確かに菅原は澤村や東峰とずっとやって来て信頼関係も出来てる。だけど、菅原が言ってるのはそういうことじゃねぇんだよ」
菅原の一大決心を、分かってやれ・・・
そう言われたら、もう何も言葉が出てこなくて私は黙り込んだ。
3年生は、ひとつひとつが最後の大会で、試合で。
勝っても、負けても、来年また頑張ろうだとか、そういうのはなくて。
なのに、菅原先輩はそれを分かってて、自分より影山を使って欲しいと繋心に頼みに来たんだ。
出たくても出れない悔しさは、私にも分かるけど。
きっと菅原先輩のそれは、私のとは段違いに違うんだろうと思うと、どこかやるせない気持ちも完全には消えなくて、ただただ、その場で口を閉ざした。
繋「紡、一応言っとくが勘違いはするなよ?」
『勘違いって?』
繋「勝ち進む為の切符の為に菅原は影山をって言ったが、それは菅原の諦めじゃねぇ」
『諦めた訳じゃないって、どういう事?』