第38章 切られた火蓋
『それに、そんな事いまに始まった事じゃないじゃん?中学の部活の時だってあったし、逆の時だってあっ・・・痛っ、いたたたたっ!』
言い終わる前に影山が私の頭を鷲掴みにして、眉間に深くミゾを作る。
影「だから、そういうのいい加減やめろって言ってんだよ。国見は青城なの忘れてんのか?」
『あのさ影山・・・私だって国見ちゃんが青城だってのは分かってるよ?だけど、それ以前に友達じゃん?そこまで敵対視しなくてもいいん・・・ぎゃー!ハゲる!っていうか頭もげる!離して、ホントに!』
ジタバタと暴れると、漸く影山が私の頭を解放してくれる。
・・・ハゲなくて良かった。
影「お前は全然分かってねぇし。俺が言いたいのは国見がお前と友達だとか、そんなんじゃねぇよ。むしろそんなのはどうでもいい・・・いや、よくはないか・・・いや、でも、よくもなくもないっていうか・・・」
影山・・・全然言ってることが分かんないです、はい。
モゴモゴと自問自答を繰り返す影山を見ながら、そんな事を話す為にトイレに行くとか言ってここに来たの?と聞けば、影山は急に黙り込んでジッと私を見つめ返す。
影「城戸・・・この大会が終わったら、だけど」
そこまで言って、影山は大きく深呼吸を繰り返す。
『この大会が、終わったら・・・?』
まさかとは思うけど、バレー辞めるとか言い出さないよね?
だって影山からバレー取ったら、なにも残らない・・・ってのは言い過ぎだけど、それくらいバレーばっかりだから、影山は。
影「大会が終わったら・・・だから、終わったらだけど・・・クソッ・・・」
え、また急に不機嫌モード発動しそうな感じ?!
さっきみたいに頭を掴まれたらイヤだと思いつつ、気付かれないように少しずつ後退る。
影「おい、なんで後ろに下がるんだよ」
バレてるー!!
『あ、アハハ・・・なんかちょっと、身の危険を感じたから、つい・・・』
影「別に取って食ったりしねぇよ!とりあえず、聞けよ」
『う、うん、分かった』
取って食ったりしないとか言ってる割には、しっかり腕を掴んでるんですけど?!
その手元をチラチラと見ては、多分いまそれ言ったら影山はまた怒りそうだからと黙認に留まらせる。
『それで、影山が言いたいことってなに?』
影「それは、だな・・・」