第4章 扉のむこう
少しの間で息を整えると、私達は近くにあるベンチへ向かった。
ハジメ先輩がベンチにポンッと私のカバンを置くと、未だつながれたままの私達の手に気がつき固まった。
「あ、いや、ワリィ・・・」
そう言いながらパッと手を離すと、頭をガシガシとかきながら遠くを見た。
「まぁ~、アレだ。その、ちょっと座って待っとけ」
そう言うとハジメ先輩は早足でどこかに歩いて行ってしまった。
私は言われた通りにベンチに座ると、カバンの中からタオルを取り出し、次から次へと現れる汗を拭う。
花の女子たるもの、公園でジャージで汗だくで・・・なんて、それでいいんだろうか?と笑ってしまう。
そんな事を考えていると、ふいに目の前に影が落ち、頭がズシッと重くなる。
「なぁに、ニヤついてんだ?」
顔をあげると、先ほど早足でいなくなったハジメ先輩が私の頭にヒジを置いていた。
『ハジメ先輩・・・頭が重いです。背が縮む~っ!』
「プッ・・・クッ、クククッ・・・」
私の小さな叫びに、ハジメ先輩は吹き出した。
「お、お前、こんな事で背が縮むわけねえだろうが、ククッ・・・」
『むぅっ、だって私の1番のコンプレックスなんですよ~!』
「いいじゃねぇか、別に小さくたって。それよりほら、息切れかますほど走ったんだからこれ飲んどけ」
『わぅ。アイスミルクティ~、ありがとうございます』
ハジメ先輩は私が大好きな飲み物を買いに行ってくれていた。
「わぅ。ってなんだよ。しかしあれだな。たいした距離走ってないはずだが、あんくらいで息切らすとか体力ねぇなぁ」
ハジメ先輩も隣に腰掛け、自らも同じ飲み物を飲み始める。
『違いますよ~、確かにハジメ先輩と比べたら体力は天地の差があるかもですけど。でも、比べるべきはリーチの差ですよぅ』
「あ~ハイハイ、すみませんね、足が長くてな」
『うぅ~、なんか凄く負けた感がハンパない・・・』
その日は、そんな軽口を言い合いながら夕方までのんびり過ごし、その後ハジメ先輩に送られながら家に着くまでの間、ハジメ先輩は明日は及川がうるさいだろうとか、今年の夏は特に暑いとか、そんなたわいもない話をしながら帰った。