第38章 切られた火蓋
武「これが最後の荷物ですね?」
『はい、大丈夫です』
大会が行われる会場までは、学校から武田先生がマイクロバスを運転してくれて、取り敢えずの場所で1度停めてみんなを降ろし、駐車場からだと遠くなるからと荷物まで一緒に降ろしてくれる。
武「では、僕はマイクロを割り振られた場所へ置きに行ってきます。澤村くん、後は頼みましたよ?」
澤「ありがとうございました先生。よろしくお願いします」
みんながそれぞれ担当している荷物を持って、建物へと向かい出すのを見送りながら、私は自分に割り振られた物を手元に置きながら武田先生が戻ってくるのを待っていた。
それは、繋心がそうしろって言うからだけど。
繋心の話だと、武田先生は今回の大会が初めての同行で、会場へ入ってから待機場所までスムーズに来れるように・・・とか。
私は中学の時に何度もここへは来ているから、うっかり迷子になりそうな先生をちゃんと連れて来いって言われたんだけどね。
先生を待ちながら何気なく空を見上げれば、雲ひとつない青空が広がっていて。
肌を撫でる風に、今日も暑くなりそうだなぁ・・・なんて足元のジャグを見つめた。
1試合ごとに、みんなのスクイズの中身を補充しないとだな・・・
私は清水先輩みたいに試合中はコート脇には降りれないから、せめて自分が出来ることは率先して働こう。
武「城戸さん、お待たせしました」
パタパタと駆け寄る先生を待ちながら、すぐに移動出来るようにと手荷物を持つ。
『じゃ、行きましょうか』
武「案内よろしくお願いします。あぁ、それ。僕もお手伝いしますよ」
荷物を貸してください?と手を伸ばす先生に、先生は運転もしてくれてるんだからと言えば、それでも女の子が1人で持ち歩く荷物の量ではありませんからと半ば強引にほとんどの荷物を先生が持ってくれた。
武「では、みんなに追いつくように急ぎましょう」
『・・・ですね』
ニコリと顔を合わせながら、会場へと続く通路を進む。
ロビーにはいろいろなユニフォームやジャージ姿の人が溢れていて、それを視界の隅で流しながら、烏野メンバーは・・・と武田先生と歩く。
武「おや?どうやら皆さんに追いついたようですね」
ほら、と視線だけで示された方向を見れば、揃いのジャージを来た見慣れた集団が見え、私達の視線を感じたのか、その中の1人が振り返った。