第37章 その先にある未来
清水先輩が最近ずっと一人仕事してたのは、これだったんだ・・・と、あんなに大きな断幕を誰にも気付かれないように一生懸命にキレイにしている清水先輩の姿を思い浮かべて胸が熱くなる。
私や他の誰かに手伝いを頼むのは容易だけど、でも、それをしないでひとりで・・・って言うのは、きっとそれだけ3年生としてこのチームに思い入れがあるんだなぁと感じて泣けてくる。
影「城戸。なにお前まで泣いたんだよ」
『う、うるさいなぁ、もう。いいじゃん別、に?!』
呆れ顔を見せる影山の向こう側で、私なんかよりも遥かに感極まっているメンバーがいて驚く。
澤「清水・・・こんなの初めて・・・」
まだ、澤村先輩を含む3年生組はいい方で。
田「き、潔子さんがぁ!!!」
西「龍!!それを言うなぁ!!!」
月「なんなの!収拾つかないんだけど!」
滅多に声を荒らげる事がない月島君でさえ、その騒ぎの大きさに声を上げる始末。
・・・。
な、なんか。
『びっくりして、涙止まっちゃった・・・』
影「アホかお前」
『でもさ?なんかこういうのってイイと思わない?3年生はそれぞれ思い入れが深いだろうし、私達1年はまだこれから先の事だけど・・・いつか、あんな風にみんなで泣いて、笑って・・・っていうの、凄いよね?』
ただ思った事を話していただけなのに、そんな私を見て影山がほんの少しだけ口角を上げる。
『あのね、影山。バレてないと思ってるかも知れないけど、ちょっとだけニヤっとしてるの私には分かるからね・・・付き合い長いんだから』
ぺコン、とお腹に軽くパンチを送れば影山はまた小さく笑う。
『だから笑うとかなし!』
影「いいだろ別に・・・そんじゃ、2年後に期待しとくからしっかり働いとけ」
『アイタッ!』
・・・は?
なんなの2年後って!
・・・2年後って普通に私達も3年生なだけじゃ・・・ん?
ペチッとデコピンされた場所を擦りながら心の中で言って、自分達が3年生というところで思考が止まる。
3年生、か。
私にも、清水先輩みたいにみんなが喜んだり、一致団結!みたいな盛り上がりを見せてくれるような事はできるんだろうか。
未だ収まることのない騒ぎに目を向けながら、ほんの少しだけ遠い未来を思い描いていた。