第37章 その先にある未来
「あのさ、城戸さん。今日の練習の時に、ちょっとでいいからオレにトス上げてくれない?」
『私が、ですか?でも大会近いし、スガさんや影山がトス上げた方が練習にもなるし・・・反対側のコートに入って、ひたすらレシーブするとかなら東峰先輩のスパイク練習にはお邪魔にならないんじゃ?』
「たまには、どう?」
う~ん・・・と考え込む城戸さんに、それでもトス上げてくれたら嬉しいんだけどな?なんて言ってみる。
『大地さんが、いいって言うなら』
城戸さんが返事を迷いながらも大地の顔を見れば、大地は大地でオレにちゃんと練習になるなら少しくらいはいいぞ?と笑う。
「大地もそう言ってる事だし、大地の気が変わらないうちに体育館行こうか」
『ですね!行きましょう!』
さっきの表情とはまるで違う笑顔を見せる城戸さんの顔が、西谷が言うようにメガネなんてない方が・・・なんてこっそり同感する。
『あの、東峰先輩?私の顔になにか付いてますか?』
「えっ?!なんで?!」
『気のせいかも知れませんけど、なんかずっと見られてる気がして』
ヤバッ・・・オレそんなに見ちゃってた?!
タジタジとするオレに、その場にいるメンバーがジロリと視線を集中させる。
菅「旭・・・お前、オレの紡ちゃんをジロジロ見るなよな」
「オレのって・・・じゃあ、やっぱりスガと城戸さんって」
澤「なにがオレのだよ。どさくさ紛れにそんなこと言ってると、また清水に怒られるぞ?」
菅「いいじゃん別に。もしかしたら未来はそうなるかも知れないだろ?」
西「オレは潔子さん一筋ッスよ!」
『なにワケの分からないこと言ってるんですか』
スガがこれだけアピールしてるのに、城戸さんは気付いてないのか?
影「城戸。部活の時間がなくなる・・・行くぞ」
『ちょっと影山!引っ張らないでってば!』
スルッと入ってきた影山が、城戸さんのリュックを引きながら歩き出してしまう。
「城戸さんて、結構な鈍感なのか?」
「「 まぁな・・・ 」」
オレの呟きに、スガと大地が声を揃える。
「さすがに今のはオレでも分かる位の、なのに」
菅「それが紡ちゃんなんだよ」
澤「それより旭はこの後・・・責任持てよ?張り切った紡は俺より厳しいぞ?」
えっ、そんなに?!と違う呟きを零しながら、少しずつ遠ざかって行く2人の後ろ姿を見た。