第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
いろんな偶然が重なって、もう会うことはないだろうなって思ってたのに···再会したけど。
あの時はホントに···ほんのひと声聞いただけで、誰なのか分かってしまうくらい心の中にまだ住んでいたんだと自覚もして。
だけどもう、叶うことのない事だと言うことも···分かってて。
ー ピーッ!! ー
スクリーンの中で鳴り響くホイッスルに、ハッとする。
···映画に集中しなきゃダメじゃん、私。
せっかく矢巾さんに誘って貰ってるのに、考え事なんて失礼でしょ!
そっとストローに口を寄せて、静かに喉を潤しながらスクリーンへと視線を移す。
そこでは、これを勝ち上がれていれば大きな大会へと進むことが出来たのに···というセリフと共に、コートに膝をつくキャプテンがいて。
側にはマネージャーであり、キャプテンの恋人でもある女の子が寄り添うシーンで次のシーンへと移って行った。
見ているだけでも日射しの熱が伝わって来るような中で、次の大会を目指して練習をするチームメンバー。
キャプテンである人は、何かを思い詰めるような顔をしては大きな息を吐いていた。
そんな姿を心配そうに見つめるマネージャーも、同じようにため息を吐いては仕事をこなしていた。
そして少しだけ季節が動き、穏やかな風を受けながら2人が校舎の屋上で向かい合って、キャプテンが繋いでいた手をゆっくりと離した。
「ずっと、考えていた事なんだけど···聞いてくれるか?」
「うん···なに?」
「オレ達、今日で終わりにしよう」
「···え···?」
···それはヒロインさん驚くよね。
なんの前触れもなく、そんなこと言われたら。
ついさっきまでは、手だって繋いでたのに。
······。
なんか、この流れって···ちょっとイヤかも。
まるで、いつかの事を思い出してしまうようなストーリー展開にチクリと痛む物がある。
「ただ単に終わりにしたい訳じゃない。オレ、どうしてもバスケを続けたい。だから、今だけは色んなものを切り離して集中したいんだ···」
「なんで?!納得いかないよ!だって···一緒に全国1を目指そうって言ってたじゃない!」
「ゴメン」
「ゴメンなんて聞きたくないし、終わりになる意味もわかんない···」
「···ゴメン」
何度もゴメンを繰り返して、そのままキャプテンは去っていく。
