第33章 それぞれの覚悟
~ 国見side ~
1巡目は全然コートに入らなかったな、紡のやつ。
一瞬だけピンサーで入ったけど、それは多分···流れを変える為のだろ。
それ以外はひたすら何かの記録をつけては、紡のアニキに見せて話をするっていうだけで。
試合前の軽い練習の時はあのアニキ達がトス上げしたりボール出ししてっから、紡はベンチで顧問と見てるだけだし。
···つまんね。
金「なぁ国見。城戸は試合出ないのか?」
ペットボトルに口をつけながら金田一が烏野女子チームを見ながら聞いてくる。
「知らね」
金「1巡目は1回も勝ってねぇし、今日はホントに頭数合わせだけの参加なのか?」
「だから知らねっての。そこんとこ矢巾さんの方が詳しいんじゃねぇの?」
相談とかされてた位だし。
それに、俺は見た。
矢巾さんがカバンに付けてたマスコットキーホルダーと色違いの同じものが紡のリュックにもぶら下がってた。
あのヘンテコリンなチョイスからいって選んだのは紡だろ。
相談に乗ってくれたお礼に、とか言って紡が渡したって感じだけど、律儀に “ あの ” 矢巾さんが付けてるってのが···イラっとする。
金「お、おい国見!アレみろよ!」
小声ながらも鼻息荒く俺の肩を掴む金田一の目線の先には、紡が羽織っていた上着を脱いでサポーターに足を通す様子。
「お前···紡の生着替え見て興奮してんなよ」
金「ばっ、ち、違っ!!」
···図星かよ。
及「え~なになに?金田一ってば紡ちゃん見てエキサイト状態なの?」
うわ···エロフェミニストが食いついてきた。
「そういう及川さんも、ですかね?」
及「え?なんでオレ?」
···試合中、主審のクセにヒマさえあればベンチの紡を見てたクセに。
「ま、エキサイトするならご自宅で “ おひとり ” でどうぞってコトっす」
及「おひとりでって···それじゃ寂しいから国見ちゃんも一緒にどう?」
···キモ。
どこの世界に“おひとりさま”を隣同士でやるヤツがいるんだよ。
「そういうの、間に合ってますんで。つか、及川さん主審ッスよね?そろそろ台上がった方がいいんじゃないんスか?」
2巡目の最初の試合は烏野女子チームが出てくる。
チラリと見て、シューズの紐を結び直す紡を確認する。
いよいよ始動か?
そう思いながらラインズの位置に戻った。
