第33章 それぞれの覚悟
なぁ?と言って笑う慧太にぃに、桜太にぃも、そうだねと笑い返す。
データ収集···だから細かくコメントとかを書き加えてたんだ。
慧「おかげさんで、とりあえずコッチの準備は粗方整った。で、キミらはどうしたい?」
道「どうしたいっていうのは?」
慧「このままでいいのか、勝ちたいかって事だ」
そのひと言にメンバーがザワりとする。
このままか勝ちたいかなら、もちろん後者だと思う。
けど···一巡目が全敗だった事を考えると、そう簡単に勝ちたい!とは言い難い。
桜「慧太、そんなガツガツした聞き方をしたら嫌われてしまうよ?···聞き方を変えようか。もし、勝ちたいと思うなら方法はあるけど、どうする?乗る?それとも、退く?」
いや、桜太にぃの聞き方もある意味ちょっと怖いから。
だけど、桜太にぃがそういう聞き方をするのは勝ちたい方を選べは、さっきみたいなヒトケタ負けは絶対にしないって事だよね。
だったら答えは、ひとつしかない。
澤「道宮。どんな事でもさ、やろうと思わなければ事を成せないし、勝とうと思わなければ···勝てないよ?」
道「澤村···それはそう、なんだけど」
澤「なにを躊躇ってるのか分からないけど、勝ちたいと思う気持ちがあるなら、答えはひとつなんじゃない?」
道宮先輩が躊躇う理由。
それはきっと···
桜「もしかして俺の事を気にしてるとするなら、それは大した心配じゃないから。勝ちたいと思う気持ちで戦って、もし負けてしまったら···それはキミ達のせいじゃない。俺の戦略不足だからね」
慧「そういう事。桜太がみんなに確認したいのは、負けた時の後悔の気持ちじゃない。勝つ為のそれぞれの覚悟だ」
桜「そうだ!もし全勝した場合は慧太が潔く髭を剃り落とすってのはどう?」
慧「オレだけペナルティ?!」
慧太にぃの···ヒゲ···マジか!
『道宮先輩!2巡目の試合、全部勝ちましょう!是非とも!!』
慧「紡!お前オレのヒゲ賭けたら急に乗り気になりやがったな!さっきまではヘッポコサーブ打ってたクセに!···澤村、菅原!お前らも笑うな!」
どわっと笑いが起こり、硬かった空気が柔らかな物へと変わった。
桜「決まり、かな?」
道「はい!よろしくお願いします!」
フワリと桜太にぃが微笑んで、勝つ為の作戦を聞く為に広がった輪が小さくなっていった。
