第32章 不協和音
道「2巡目からは、負けられないってことか···」
桜太にぃの言葉を聞いて黙り込んでいた道宮先輩が、自分自身に確認するかのように呟く。
武「要するに、負けなければいい···ということですね?引き分けなら幸い、勝てればそれに越したことはないと考えれば、道宮さんも気が楽になるのでは?負けられない、勝たなきゃいけないと思えば思うほど人は変に力が入ってしまって上手く行かないことが多いと思いませんか?」
さすが武田先生···ナイスアドバイスですよ!
私だって、先生にそれを聞くまでは勝たなきゃいけないと思っていたから。
道「もし負けたら···」
武「たらればの話は考えない方がいいでしょう。それを考えるだけで、マイナス思考に陥りますから···はい、深呼吸してリラックスして下さい?」
菅「おぉっ、なんか深呼吸したらリラックス出来た!」
澤「お前がリラックス出来てどうするんだよ···」
菅「あ···ですよね~···」
澤村先輩と菅原先輩のやり取りに笑いが起こる。
確かに菅原先輩がリラックスしてもしょうがないかもだけど、でも、いまの笑いでみんな変な力が抜けた感じ。
桜「それじゃ、コートに入るメンバーを言うからよく聞いて?それは、紡以外の全員コートに入ること」
道「えっ?!でも城戸さんには助っ人に来て貰ってるから、出来ればフルで入って欲しいんですけど」
桜「そうかも知れないけど、それでも紡は出さない。まずは自分達の力でどれだけやれるか、試してみて?」
桜太にぃが、珍しくちょい辛めなことを言ってる。
···気がする。
桜「···とは言っても、コートの中では何が起こるか分からないから、イザって時には出すけどね。でも、それでもあくまでも紡は補佐的なだけ。1巡目の結果を見て、2巡目からはみんなの様子を考慮しながら···かな?」
慧「ってコトで、紡?お前には優しくてイケてるオレ様から素敵なプレゼントだ···ほれ、受け取れ」
ポンっと手渡されたものは···
『ノートに、ボールペン···記録を取れってこと?』
慧「そゆこと。今後のアイツらの為にも、気合い入れて記録取れや···ちなみにそのボールペンは優秀な桜太先生が御愛用のボールペンだ」
桜「今日は特別に貸してあげるよ」
桜太にぃ愛用の···なんかそれだけで気合い入れて書けそう。