第32章 不協和音
お願い···届いて!
届きさえすれば、あとは!
思いっ切りのジャンプをして。
思いっきりに腕を伸ばす。
指先にまで力を入れて···精一杯!!
目の前で、ほんの少しだけ···指先にボールの底辺が触れる。
軌道だけでも変えれば、どうにかなる!
フワリとボールが動いた時、目の前の影山と視線が絡んだ。
ヤバい···止められちゃう!
そう思ったら、咄嗟に···
『影山パンツ見えてる!!』
思いっきり叫んでいた。
影「ゲーパン履いてんだから見えるわけねぇだろボゲェ!···あっ···」
ネットの向こう側で、ボールの跳ねる音が聞こえて。
ー ···ピッ! ー
清水先輩が躊躇いがちなホイッスルを吹いた。
繋「慧太···今のは反則だろ」
慧「公式じゃねぇから、オッケーだろ···つうか、パンツ···ぶはっ!!」
コート外のふたりが吹き出して笑い出すと、コート内でも笑いが起きて影山の表情が鬼へと変わる。
影「てめぇ城戸!きたねぇぞ!!」
『だって~!』
影「今のめちゃくちゃ反則だろうがっ!パンツってなんだパンツって!あぁっ?!そんなもん普段から見てんだろうが!」
「「 えっ?! 」」
影山が叫びながら言えば、今度は女子チームから驚きの声が上がる。
『ちょっと!誤解を招く言い方やめてよ!私がいつ影山のパンツ見てるのよ!』
影「事が終わって着替える時見てんだろうが!」
『だから怪しい言い方やめてってば!』
事が終わってってなに?!
練習が終わってって言ってよ!
菅「紡ちゃんも影山も落ち着けって!じゃないと···」
菅原先輩が気を使って間に入ってくれるも、影山との小競り合いが止まらない。
道「城戸さん、とりあえず落ち着こ?ね?点は貰えてるからオッケーだからさ?」
妙に顔色が悪い道宮先輩の目線の先を追えば···
澤「2人共、いい加減にしなさい!」
『···はい』
影「っス」
『影山のせいだからね』
影「お前のせいだろ」
小声で突っつき合えば、それはまた怒られる要因で。
澤「やめなさい!」
月「はぁ、バカばっか」
影山の襟首を掴んで、澤村先輩が引きずって行った。
慧「今のは特別オッケーだからな?面白かったから。次はちゃんとキメろよ?」
ニヤリとする慧太にぃに分かってるよ!と返し、元の位置に戻った。