第32章 不協和音
来る···
菅原先輩がトスを影山に上げた。
影山は絶対、手加減したスパイクなんて打たない。
相手が誰だろうと、全力で来るはず。
だったらここは、こっちの士気をキープするにもボールは落としたくない。
桜太にぃが考えた独自のルールは···
桜「烏養、さすがに男子と女子の力の差は大きいだろうし翌日に備えてケガしても困るから···5点取れたら女子チームの勝ちって事でいいかな?その代わりそっちはどれだけ点取っても構わないからさ」
繋「5点?そんなに取れんのか?」
坂ノ下商店の前でタバコをふかしながらニヤリと笑う繋心に、桜太にぃもフッと笑いを漏らしながら真っ直ぐ繋心を見て。
桜「あれ?そんなに自信あるなら10点にしてもいいけど、どうする?もしそうなったら、男子チームの柱が折れちゃうんじゃないかな?ほら···女子にそこまで点取られた···みたいな?」
繋「···5点で」
私としてはちゃんと25点のでって言ったけど、桜太にぃも慧太にぃも···首を縦には振らなかった。
いまは既に繋心チームから何点も取られてしまってはいるけど、こっちだって道宮先輩のスパイクで1点は取れてる。
スパイク打った本人がなぜか誰より1番ビックリしてたけど。
···そしてレシーブし損ねた山口君は凄く落ち込んでたけど。
まぁ、そこは後でどうにでも励ましようがあると思うから。
いまは目の前の影山に集中しないと。
どこへ打つ?!
誰に打つ?!
···予測出来ないなら、誘い出す?!
上手く行くかはわからないけど、それでも下手に点を決められるよりは絶対いい。
大丈夫。
今までのチーム内の紅白戦でも、影山のスパイクは何度も受けた事がある。
···痛いけど。
『影山、勝負!!』
声を張り上げ影山の意識を自分に寄せながら数歩下がって強烈なスパイクに備える。
叫びながら背中に隠したサインを回し、もしもの時の
フォローを頼む。
影「ナメんな!」
やった···かかった!
こういう時の影山は、絶対アレで来る事が多い。
影山が大きく腕を振りかぶり、スパイクモーションに入る。
てのひらの向き、指先の動きから目を離さずに一気に足を動かすと同時にボールが影山の手に触れる。
『読み通り!』
思い切り打つと見せかけたボールは軽く叩かれネット際でゆっくりと落ちていて行く。