第32章 不協和音
『好きなタイプって···言われても』
女子が集まるとすぐこういう話で盛り上がるから面倒だと国見ちゃんには前から聞いてたけど···私にもイマイチついて行けそうもないなとカラ笑いを見せる。
どっちかと言えば、影山達と誰々のあのプレーは凄い!とか、そういう話の方がついて行けてるし。
どこだかのパンケーキが···とか、そういう話より、シューズの新モデルが···とかいう話の方が耳に馴染んでたり。
そもそもパンケーキ屋さんのがふわふわで···とか言われても、桜太にぃが作ってくれる方が美味しいから外ではあんまり食べたことないし。
···いちごパフェとかくらいしか。
あれ···?
そう考えると、もしかして私···女子力ない?!
「ねぇねぇ、どうなの城戸さん?」
『あっ、えっ?!あ、そうそう、パンケーキでしたっけ?!』
ひょこっと顔を覗き込む先輩に驚いて1歩下がりながらも言えば、パンケーキなんて誰も言ってないよ~と大笑いされてしまう。
違った···話題の選択肢間違えた···パンケーキは私の頭の中だけの話だった。
「で、誰がタイプ?」
『誰って言われてもですね···』
「メンバーひとりずつ思い浮かべてみなって!絶対ハマるタイプの1人くらい出てくるって!」
そう促されて、言われるように近場から1人ずつ思い浮かべてみても、やっぱり好みのタイプって言われてもなかなか難しく···
『好きなタイプって言われても、いないみたいです』
そう答えるしかなかった。
『あ、でも』
「でも?!」
『一緒にいると和む···と言うか、癒されるなぁ~って感じの人はいますよ?』
先輩達が知りたがる好みのタイプとは全く違うかもだけど。
『顧問の武田先生はお話したりしてると、なんだかホッとする感じがして先生の中では1番好きかもです』
「「 まさかの武ちゃん?! 」」
『あと、部員の中だったら···山口君とか』
「それだよそれ!その答えを待ってた!武ちゃんではなく!」
『なんでですか?武田先生は優しいし、いつも欲しい言葉をサラっとくれたりとかしますよ?』
これまでだって、いろんな場面でいろんな言葉をくれて元気づけてくれたし。
「だって武ちゃんだよ?ウチらより相当年上じゃん?」
「そうそう!年上過ぎるのより、身近な癒しボーイの方がいいって!」